今一番に集中すべき作業は、秋からお納めすべき浅草の三社様(浅草神社)裏手の被官様(被官稲荷神社さま)向けの鉄砲狐です。三回に分けてお納めするのですが、夏の間に3回でお納めするべき総数は素焼きまで済ませてプールしておけば、あとあと安心です。
それと同時にそのあとに来る干支の支度も今年こそ早めに始めておかなければ、、、ととりあえす一種類目は型を起こして型抜きをし、素焼きして絵付けまで試行してみました。謂わば一番型です。
この数年は干支も辰に巳など、古い今戸焼のお手本のあまりないものだったので仕方なく創作してみたり、小さいものを拡大したりなど苦しいものでしたが、新年の午は今戸に限らず、各地の伝統的土人形産地にも数多くの伝統的な型があるのではないでしょうか。今戸に限って言えば、午をモチーフとした伝統的な型の人形はいくつかあり、どれもやってみたいものばかりですが、全部というのはちょっと厳しいかも、、。独断で、今戸焼の土人形の古典的な型で一番今戸らしくて好きなのは画像の「午乗り狐」です。戦前にお亡くなりになられた生粋の最後の今戸人形師であった尾張屋・金沢春吉翁(明治元年~昭和19年)以降、作られなくなってしまった種類のデザインですが、都内の近世遺跡からもあちらこちらから出土していますので、江戸、明治の時代にはかなり人気のあったものなのだろうと思います。
今回のお手本は戦前の春吉翁作のものも手元にあるのですが、それとは別に戦前の人形研究家だった有坂与太郎の旧蔵していたという土中から出土したという色のとれてしまったものがありますので、色がとれて彫りがはっきりとしているという理由で、有坂型をお手本にモデリングしました。おそらく戦前の尾張屋さんの作はそれよりもひとまわり小さくできているので、反対に有坂型はもう少し大きいということになります。彩色は尾張屋さん式に塗っています。
画像の分は一番型として彩色まですすめたものですが、まずはこれから被官様へお納めする鉄砲狐を最優先に進めながら干支の準備もすすめていくという見通しでやっています。午(馬)に関する今戸の古典の型の面白いものもまだあるので、できればもうすこし種類を起こしてみたいと思っています。