7. 窒素の大循環
窒素は、空気中の80%を占めている、この空気中の窒素を根粒菌によって、硝酸や亜硝酸、アンモニアを生産し、それを植物が利用し、タンパク質やアミノ酸、核酸などの窒素化合物を生産する。動物は、そのタンパク質を食べて、アミノ酸として、体内でこれが代謝されると、アンモニアができる。
すなわち窒素は、大気からはじまり、根粒菌を経て、植物によって、タンパク質やアミノ酸となり、動物の体内を代謝して、アンモニアを排出しさらに一部は筋肉となって、やがてその動物は、食物連鎖を経て、死によって土壌成分となり、アンモニアが大気に放出される。
ここで、窒素循環の要となっているのは、根粒菌と植物である。植物は、亜硝酸を栄養素として、実を結ぶことによって、豆や穀物として人や動物の食物となり、動物の筋肉となる。根粒菌は、マメ科の植物の根に共生している。
植物は、根粒菌に糖分を与え、根粒菌は、空気中の窒素を植物からの糖分を燃料として、複雑な反応を経て、植物が根から吸収出来る亜硝酸を生成する。この根粒菌はなぜかマメ科の植物にのみに、寄生し共生する。このため豆には、タンパク質が豊富であり、米や麦と豆いっしょに食べると栄養のバランスが良い。
森林の各樹木には、内生菌や外生菌の固有の共存関係が存在し、それぞれの樹木と菌の共生関係が成立しないと豊かな森林は生まれない。このため、樹木の苗を植える時、根に固有の共生関係にある菌を付着させることによって植林の効率を向上させる。
窒素の大循環のエントロピー逆走エンジンは、空気中の窒素を利用して亜硝酸を生成する根粒菌であり、その亜硝酸と葉緑体で生産された糖類をエネルギーとして、タンパク質や核酸を豊富に含む植物の種子を実らすことである。(第9回)
6. 炭素の大循環
有機物の酸化分解や、化石燃料が燃えることによって、CO2と水蒸気が排出される。大気中にCO2が放出拡散するため、あらゆる場所にCO2は供給される。空気中のCO2は、太陽光と水を原料として、植物の葉の中の葉緑体に於いて、糖類を生産する。この時、酸素を排出し、酸素の大循環エントロピー逆走エンジンでもある。
この植物が生産する糖類を動物は食物として利用し、糖類はATPに変換され、動物の運動エネルギーとして利用される。植物のセルロース分が、地下での堆積によって化石燃料となる。すべての生物が枯死すると微生物の力によって、土壌成分とCO2と水、メタン等に分解され、土壌と空気中に炭素は放出される。これらは、陸上に於ける炭素の大循環である。
海水の表層は、空気中の炭酸ガスを吸収している。CO2は他の気体と異なり、水に溶けると解離して、弱酸性になる。このため表層水の中では、酸素の5~10倍のCO2が溶解しているが、溶存炭酸ガスの大部分は、乖離イオンとなり、CO2として存在するのは僅か1%以下である。このため、魚は水中に於いて、生存できる。
植物性海洋生物の量は、陸上と比較して、0.2%の過ぎないが、有機物の年間生産量で比較するとほとんど変わらない。それは、陸上植物は、2倍に増えるためには、数ヶ月~数年かかるのに対して、海洋の植物プランクトンは僅か数日で、倍増する。つまり、海洋生物のライフサイクルの回転が速いという特徴がある。
海洋生物の一部は、無機炭素として、深層部へ沈殿する。このため深層水の過剰の無機炭素は、海洋の大循環で1千年ほどのサイクルで、表層に浮かび上がって、植物プランクトンを発生させ良い漁場となる。海水のCO2はサンゴや貝類によって、炭酸カルシウム(CaCO3)として海水から沈殿する。これが、海洋に於ける炭素の大循環である。
炭素の大循環のエントロピー逆走エンジンは、葉緑体での糖類の生成であり、酸素の大循環のエントロピー逆走エンジンでもある。(第8回)