15. 生物によって作られた芸術
15.1 昆虫によって創られたもの
ハチの巣、クモの網、カイコのマユ等は、昆虫が幼虫を育てたり、蜜を貯めるため、エサを捕獲するため、脱皮するために、これらは構築される。これらの構築物は、ある機能を持って、明らかにエントロピーに逆走しながら創られる。
これらは、本能であるとか、生物進化の産物であるとか、遺伝子のなせる技であるとか言われるが、何十億個の体細胞がなぜその時点で、その生命体をある方向に一歩進める時、その1個の細胞が自分はこの部分を分担しているので、こう行動すべきと判断して、何十億個の細胞が連繋して、その生命体のためにある行動をすることは、素直に不思議なことであるのではないだろうか。
例えば、スズメバチの巣は、常に スクラップ アンド ビルド(あたかも代謝のように) によって、スズメバチの巣は状況に応じて容積を大きくしてゆく。巣を大きくするには、内部より、外壁をかじり取り、幼虫を育てるための六角形の幼虫を育てるための房を増やし、外壁が薄くなったところは補強される。従って、外からの観察者は、スズメバチの巣は、あたかも自然に大きくなったように見える。
このために働きバチがふえるに従って、巣が大きくなることが可能であり、雨や風、外気の暑さ、寒さ、力学的強度にも耐えるように、場所を設定し補強が常に行われている。
単にエネルギー源となる、食物が供給されたとしても、それが人間が考えても、そう簡単には出来ない完成度、すなわちエントロピーへの逆走のレベルの高さは、どのように考えることが可能なのか。
このエントロピー逆走エンジンは、嬢王蜂は卵を生むために、働きバチは幼虫を育てるために働き、オス蜂は受精のために生きる。ドーキンスの言うように、遺伝子を未来に運ぶために、生命はエントロピーに逆走しいるでは、少し飛躍していると感じるのは、私だけだろうか。(第21回)