チェロ弾きの哲学ノート

徒然に日々想い浮かんだ断片を書きます。

火、鉄、蒸気機関、内燃機関、タービン、電気(その5)

2012-08-03 11:36:02 | 哲学

16.3 火、鉄、蒸気機関、内燃機関、タービン、電気(その5)

 蒸気タービンは、ワットの蒸気機関に比べて、蒸気の力で羽を廻すことなので、原理は単順であるが、ワットが蒸気機関を発明してからは人々の関心はそれていった。優秀な技術者たちは、彼らの知識がますにつれて、実用的なタービンを作るには、すごい困難があることを悟るようになっていた。

 タービンの羽の形状やケーシングは18世紀後半に進歩した流体力学の理論によって正しく設計されていなければ、タービンは力を出すことが出来なかった。タービンの高速回転による遠心力、圧力勾配を保つための気密性、高温に対応する機械の接合の精密さを保つ工作技術上の困難は、19世紀後半まで、解決出来る水準ではなかった。

 しかしそれでも、タービンはいくつかの利点をもっていた。蒸気機関のように、いったん往復運動にしてから回転運動に変えるという回り道をなくすものであった。

 1884年イギリスのチャールズ・パースンスが動翼と固定翼を多段階に胴状ロータに配置し、蒸気圧力を数段に分ける多段階衝動タービンを製作した。そして発電に関係するタービンを発展させた。1892年には、復水器の導入、すなわち蒸気タービンの熱効率を上げるために器内を真空近くに保ち、タービンからの排出蒸気を容器に導き、冷却すれば蒸気は凝結し、低圧になった蒸気をさらに膨張させることができた。
そして1912年には、蒸気機関に大きさでも効率でも、蒸気タービン発電機がその可能性を乗り越えた。

 タービンエンジンのもう一つの用途である飛行機は、1939年にドイツでジェットエンジンによる初飛行に成功した。ジェットエンジンの難関は燃焼室を高圧にするために、多段軸流圧縮機によって実現した。その後、二軸ターボファン・エンジンとなり、同芯二軸構造をとり、外側を低圧多段軸流圧縮機と低圧用タービンとし、その内側を高圧多段軸流圧縮機、燃焼室、高圧用タービンの構造によって、圧力分散によって高圧燃焼を実現し、推進力を引き出した。

 現在、電力は天然ガスによってガスタービン発電機で発電し、その廃熱を利用して、蒸気タービンで発電し、トータルの発電効率を高めている。その電力を送電網に送って、今日のエレクトロニックス時代を迎えた。電力はあらゆるエネルギー形態に変換可能であり、かつコントロールの自由度が非常に高いため、あらゆる社会的分野に浸透した。

 一方ジェットエンジンは、地球上のすべての都市をハブ空港網で結び、大量旅客輸送時代を迎えた。人類は空を飛び、洗濯機、冷蔵庫、電話、テレビ、インターネットによって、エントロピーに逆走する更なる自由度を獲得した。(第31回)