CD番号 ドイツグラモフォンPOCG-3846/7(2枚組)
収録年 1964年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総 合 A- ヴンダーリヒの美声、底知れぬ魅力をもった魔笛
指揮者 A- カール・ベーム(1894~1981)
管弦楽団 A+ ベルリン・フィルハーモニー
合唱団 A+ RIAS室内合唱団
ザラストロ A- フランツ・クラス
夜の女王 A+ ロバータ・ピータース
タミーノ A+ フリッツ・ヴンダーリヒ
パミーナ B+ イヴリン・リアー
パパゲーノ A- ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ
音 質 A+ 新デジタル・リマスタリングの威力
”聴きどころ”
☆この盤だけしか聴けない鳥肌が立つようなヴンダーリヒの天性の美声
☆ベルリンフィルの引き締まった鋼のような演奏
☆第二幕の果てしない宇宙空間に漂うような余韻のエンディング
第一幕タミーノのアリア”何という美しい絵姿”
私 見
ベームの魔笛の録音は公開されている範囲では1941年のライブ盤、♯5でレポートした1955年盤(旧盤)、そして今回のレポートの対象となる1964年盤(新盤)である。
リズムやテンポなど全体の進行は基本的に旧盤を引き継いでいるが違うところは次のとおり。
1 台詞が入っている。
2 オーケストラがウィーンフィルからベルリンフィルに変わっている。
3 歌手たちのメンバーを総入れ替えしている。
新盤も旧盤と同様に歌手陣のレベルが極めて高い。特にヴンダーリヒは不慮の事故により35歳の若さで急逝したが、タミーノ役としての公開録音はこれだけで天性の美声が遺された記念碑的な盤となる。
ザラストロ、夜の女王、パパゲーノも言うことなしの名唱。
ただ一つ惜しいことにパミーナ役の声質がやや暗い。それにもう少し透明さが欲しい。ヴンダーリヒの相手役としては落差が目立ちすぎる。この盤の唯一の弱点だが、やや致命傷に近い。ままならないものである。
ヴンダーリヒとギューデン(旧盤)のコンビだったら世紀の名盤になったのにと惜しまれてならない。
それにしても、旧盤と同様にこの新盤の魅力も計り知れない。音質もずば抜けている。