「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

愛聴盤紹介コーナー~大公トリオ~

2007年03月06日 | 愛聴盤紹介コーナー

CD番号     EMI-TOCE13030
収録       1958年
作曲者      ベートーベン
曲目       ピアノ三重奏曲第7番変ロ長調Op.97≪大公≫
演奏者      ヴァイオリン  ダヴィド・オイストラフ
          ピアノ     レフ・オボーリン
          チェロ     スヴャトラフ・クヌシェヴィッキー 

モーツァルトの音楽はまず美しさの方が先に立つが、べートーべンの音楽は人間の魂を揺さぶるようなところがある。この盤はそういう表現にピッタリである。

大公トリオはあの第7交響曲の少し前にあたる1811年に楽聖が敬愛する守護者ルドルフ大公に献呈した作品で、人気・内容ともにピアノ三重奏曲の最高傑作の一つとして君臨している。

作曲者本人にとっても大変な自信作だったようで初演では自らが演奏し(公開の場では最後となった)、ピアノ・トリオとしては限界を極めた作品として以後このジャンルの作曲は手がけていない。あのピアノ単独の表現の限界を極めた最後のピアノソナタOp111と似たような立場の作品である。

有名な曲なのでそれこそいろんなグループが演奏を手がけているが、じぶんが一番好きなのは
オイストラフ・トリオである。ずっと以前にレコード盤として愛聴していたのだがCDの時代となり24bitのリマスタリングとして新たに発売されたので早速購入した。

ピアノ・トリオの場合どうしてもピアノの音量や響きの豊かさが目立ち過ぎて他の二つの弦楽器を圧倒する傾向にあるが、この盤は音楽的な重心がヴァイオリンにあり、トリオの間に交わされる押したり引いたりする楽器同士の呼吸がピッタリ合っているところが気に入っている。

演奏者3人ともロシア出身だがあの極寒の大地で育まれた民族の精神性、スケールの大きさがこの演奏にもよく現れているように思った。

ずっと昔、尊敬していたオーディオ評論家の瀬川冬樹氏(故人)が大公トリオを鑑賞中に感激のあまりウーンと頭を抱えて座りこまれたという記事を見た記憶があるがおそらく第3楽章(アンダンテ・カンタービレ)のところではないだろうか。

ベートーベンのアンダンテは定評があるが、この第3楽章になるとつい内省的になって、いつも心が洗われる思いがする。ベートーベンの言う
「音楽は哲学よりもさらに高い啓示」とはこのことなのだろう。

この盤は宝物だが、どんな名曲でも耳に慣れてしまうと曲趣が薄れるのであえて滅多に聴かないようにしている。アナログ録音のためか定価1300円だったが芸術にコストは無縁だとつくづく感じさせられる。

なお、ヴァイオリン演奏のオイストラフは
「20世紀のバイオリン演奏史は究極のところオイストラフとハイフェッツによって代表される」(ヴァイオリニスト33:渡辺和彦著、河出書房新社)といわれるほどの名手である。

たしかにオイストラフに慣れ親しむと、もう他のヴァイオリニストでは満足出来なくなるケースが多く、その魅力についてはとても手短には語り尽くせない。

「オイストラフの演奏はどの演奏も破綻が無く確実に90点以上
(同書)といわれており、一時期夢中になっていろんな演奏を集めたが、特にベートーベンの「ヴァイオリン協奏曲」、モーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲1番~5番」はお気に入りの愛聴盤となっている。

                  





 


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