CD番号 原盤デッカ→ロンドンPOCL-3808/9(2枚組)
収録年 1955年
評価(A+、A-、B+、B-、Cの5段階評価)
総 合 A+ 豊かな響き、溢れる情感、雄大なスケール、完成度高し
指揮者 A+ カール ベーム(1894~1981)
管弦楽団 A+ ウィーンフィルハーモニー
合唱団 A+ ウィーン国立歌劇場合唱団
ザラストロ A- クルト・ベーメ
夜の女王 B+ ヴィルマ・リップ
タミーノ A- レオポルド・シモノー
パミーナ A+ ヒルデ・ギューデン
パパゲーノ A+ ワルター・べりー
音 質 A- (ステレオ:台詞なし)デッカの秀逸な音質
”聴きどころ”
☆ウィーン・フィルのこの上ない豊かな響き
☆パミーナ役ヒルデ・ギューデンの名唱
第一幕パミーナとパパゲーノの二重唱”恋を知るほどの殿方には”
第二幕パミーナのアリア”愛の喜びは露と消え”
〃 タミーノとパミーナの二重唱”おお、何という幸福”
〃 パパゲーノとパパゲーナの二重唱”パ、パ、パ、パ”
私 見
最初の序曲の和音が響いたときから、分厚いオーケストラの低音が響き渡り豊かに広がっていく。全編を通じてこの豊かな響きが基調となって極めて上質のオペラが展開される。
歌手の中では、タミーノ役のシモノーがセル指揮のライブ盤と比べて見違えるほどの出来栄えで驚いた。
パパゲーノ役のベリーとパミーナ役のギューデンは特上の素晴らしさだった。この名コンビの二重唱は極め付き。
特にギューデンの細身で柔らかくて透き通ったソプラノはオペラの雰囲気を一変させる力を持っている。大歌手とはこういうことなのだろう。
パミーナという王女役の重要性を改めて思い知ると同時に配役の性格付けを改めて考えさせられた。
非常に勝手な解釈だがザラストロは「荘厳と叡智」、夜の女王は「華麗」、タミーノは「勇気と情熱と気品」、パミーナは「抒情性」、パパゲーノは「メルヘン(の世界)」モノスタートスほかはスパイスだろう。オケと合唱団は支える土台であり指揮者は全体の演出だ。
魔笛というオペラの性格付けは結局この5人の配役の色付けに左右されるのだが、指揮者の意図とそれぞれの役柄のイメージと歌手の歌唱力(表現力)の三つがピタリと一致したときに上質の魔笛が誕生する。
指揮者ベームは毎朝2時間楽譜の研究に没頭する習慣を持ち、モーツァルトの専門家としてその正確な読みは従来の指揮者にはなかったものという。
スペシャリストの絶妙なリズムとテンポに安心しきってしまって思わず自己流の考えに耽ったが、いつ聴いても、何度聴いてもこの盤はじぶんにとって理想に一歩近付いた魔笛なのである。