つい先日お見えになったKさんから、我が家のオーディオ・システムに対して「スーパーツィーターをつけるともっと臨場感が増すんじゃない」というアドバイスをいただいたのは前々回記載したとおり。
Kさんもオーディオ歴40年以上の兵(つわもの)、それなりの経験豊富な耳を持っておられるので、決してあら捜しではなく、気付いたことを率直に言われたのだろう。
趣味の世界なので「唯我独尊」でも一向に構わないが、素直に受け止めることで、もっと「音」が良くなればそれに越したことはない。
正直に白状すると、どちらかといえばよそ様の意見が気になって仕方がないタイプ。
結局、永遠に「ストレイ・シープ」〔さ迷える子羊)なのであ~る!
早速チャレンジしてみることにした。
ただし、Kさんが推薦する村田のスーパー・ツィーターともなればたしか20万円前後するはずで、そこまでの大枚をはたいて冒険する気はさらさらなし。
現在のところ所在なげに無骨をかこっているJBLのツィーター「075」で実験することにした。普通の075にステンレス製の特注のリング・ホーンを付けた代物で超・重た~い。
通常、SPユニット「アキシオム80」を使っていれば、2ウェイのつくりなのでツィーターをつける必要はないが、何せずっと昔のアナログ全盛時代のユニット。
しかも別のユニット(3本)で低域を伸ばしているので、高域をもっと伸ばしてもレンジに不自然さはないだろうという算段。
これは音響理論の権威オルソン博士が唱える「40万ヘルツの原則」による。
なお、普通、人間の耳に聞こえる高い方の周波数は2万ヘルツくらいまでとされている。
したがって、軽く2万ヘルツ以上を担当するスーパー・ツィーターなんて理論上、必要ない気もするがそこはオーディオの世界。
理論と現象が一致してないことが多々ある「魑魅魍魎」(ちみもうりょう)の世界なのでやってみないと分からないことのほうが多い。音響の世界は科学的にまだ未解明の分野が沢山あると思う。
たとえば接続ケーブルによってなぜ音が違うのかも理論的に解明されているわけではない。「こんな大事なことが未だに」と思うことばかりだが、最後の拠りどころは結局「経験とカンと耳」しかない。
さて、「075」の話に戻って、コンデンサーをSPコード(プラス)に挿入して周波数をローカットすることにした。
これでもオーディオ・マニアの端くれ、こういうときのために、予備のSPコードと値の小さいコンデンサーを常備しているのは言うまでもない。
コンデンサーの銘柄によっても音は変わる。いつもスプラグのビタミンQを愛用しているが、今回は0.1μF(マイクロ・ファラッド)の東一(とういち)のコンデンサーを使ってみた。
ちなみにこの0.1μFを使ったときの受け持ち周波数
を計算(肩落ち6db/oct)してみると次のとおり。
159,000÷(抵抗8Ω×0.1)=198、750ヘルツ
何とおよそ20万ヘルツ以上になる計算で人間の耳にはまったく受け付けない周波数になるわけだが、こうなるとコンデンサーが単なるボリュームの働きしかしないそうだ。
ただし、これも「075」が105dbと極めて能率が高いので成せる業。
早速作業にとりかかって、SPコードにコンデンサーをばっちりハンダ付けした。アンプは「アキシオム80」用の真空管アンプ(WE300B、モノ×2)と共用。
これで試聴してみると、うれしいことにまったく違和感がない。
「075」に耳をくっつけてみると、かすかに「サー」ノイズが聴こえて立派に稼働中なのがわかる。実際の音もかすか聴こえる程度なので目立たないが、外してみると明確に差が分かる。
そしてKさんがおっしゃった「臨場感」がたしかに増した気がする。わずかに全体がハイ上がりになった印象なので低域のボリュームを一目盛りほどアップするとバランスがバッチリ。
丁度、タイミングよくオーディオ仲間のAさんがお見えになったので、聴いてもらったところ「鳥の産毛みたいな感じのデリケートな響きが一層出てきましたね」と好評。
知人宅でクォードのESL(静電SP)と村田のスーパー・ツィーターをセットで実験されたことがあるそうで、「効果はたしかにあります。村田はいいですよ」のこと。
やはり「よそ様」のご意見は尊重するものだと、しばらくこの状態で聴いてみることにした。