オーディオ仲間のAさん宅の「ハートレー」のシステムを聴いてから1週間あまり。
衝撃を受けたあの口径64cmの低音の興奮もようやく収まりつつあるが、我が家の低音もあそこまでとはいわないが、少しでも近づきたいと思うのが人情というもの。
何か改善の余地はないものかといろいろ考えた末、低音部分のボックスの中にまだスペースの余裕があると思いついたので吸音材をぎりぎり一杯に詰め込むことにした。
もちろん、これまでに何回も言及しているようにその材料は「鳥の羽根」。
以前、Aさんから近くの量販店で「鳥の羽根の枕が安くて売ってたので10個買ったよ」との情報を聞いていたので早速出かけてみた。
目指す品物は2階の布団コーナーにあった。丁度、「羽根枕」1個578円の特売品扱い。
どのくらいボックスに詰め込めるか分からないのでとりあえず4個購入して帰宅。
この枕、そのまま吸音材に使えると便利なのだがカバーは綿なのに、残念なことに中袋がポリエステル。ポリエステルは音響効果にとって最悪なのはこれまでの経験で充分承知のうえ。
そこで一度バラして羽根を取り出し、別の袋に詰め替え作業をすることにした。
部屋中に羽根が飛び散り、大変面倒くさい作業になるが覚悟の上。「いい音」を得るためには、ひたすら実践あるのみ。
カミさんに「おい、木綿の袋が沢山いるんだけどな~」。
「余った木綿の広い布切れが沢山あるので買うのはもったないわよ。使わない大風呂敷もあるので適当に切ってもらったらミシンで作ってあげる」となかなか協力的。
「夫唱婦随」とはこのことかと、メデタシ、めでたし。
日頃の家事などへの協力で最近、良好な関係を築いている自分の努力(?)もあるものの「オーディオ」にも随分と理解を示してくれるようになった。
そういえば20年ほど前にタンノイ・ウェストミンスターを購入したとき、つい言いそびれてしまい、我が家に運び入れるその日の朝、いきなり告白したために「柳眉」を逆立てて怒られ、1週間ほどクチを聞いてもらえなかったことがあったっけ。
もっとも、「オーディオ狂い」にもうあきれ返ってしまって諦めたのかもしれない。
とにかく「オーディオの歴史はカミさんとの闘争の歴史でもある」わいなあ~。
さて、8個の袋に詰め込みが終わるとホッチキスで袋の端をチャカチャと閉じて片チャンネル4個づつをSPボックスに収めることにしているが、この袋への詰め込み作業の真っ最中にAさんがお見えになった。
丁度、別府に来られる用事があったとのことで、お借りしていた「歌劇マクベス」や「ワーグナーの楽劇」のCDを返却するために自宅に寄っていただいたもの。
作業をご覧になって「枕1個でもバラしてみると相当の羽根の量ですね~」
「ええ、スピーカーの裏蓋を開けてみると、4つの隙間があるので、購入した3個の枕をバラして詰め替えし、ぎゅうぎゅうに押し込むことにしました」。
「作業にこれから2時間ほどかかりますので、今日の試聴は無理ですね、明日〔11日の土曜日)の午後4時ごろはいかがですか。効果の程を是非聴いていただきたいものです」。
Aさんが帰られた後、SPボックスの裏側のスペースにまるで押し競饅頭〔おしくらまんじゅう〕のように、「羽根」の袋を目一杯詰め込んで作業が無事終了。
早速、ワクワクしながら試聴したところ「奥行感が深まった」「音楽全体が柔らかく聴こえる」「ボリュームを上げてもやかましくならない」と充分満足出来る結果に。
とはいえ、こればかりはどんなに自画自賛の世界に浸っても進歩がない。
明日のAさんとの試聴結果を期待することにした。
そして、当日はちょっと早めの15時40分頃、Aさんがお見えになったので暖めておいたアンプのもと、早速ワーグナーの「楽劇ワルキューレ」(ショルティ指揮)を聴いていただいた。
「一段と良くなりましたね!ステージが出来上がってます。これまでこの家で聴いた中で最高の音です。こんなに良くなるとは驚きました。羽根の効果は絶大です。全国でもこんなにうまくアキシオム80〔以下「80」)を鳴らしている方は少ないと思います」
Aさんは「悪いときは悪い」とはっきり断言される方なので額面どおりに素直に受け取ることにした。
これも、元々はAさん宅で聴いた「ハートレー」の低音の衝撃を受けた結果の所産なので「持つべきモノはオーディオ仲間」だと改めて感謝。
こんなに「いい音」を自分だけに閉じ込めておくのは何だか勿体ない気がする中、翌日の月曜日は朝から冷たい雨模様。
こういうときは外の塗装作業は出来ないに違いない。大分市で塗装業を営むN松さんに「今日は朝から雨で外の仕事は出来ないでしょう。この前お見えになったときよりもずっと音が良くなりましたので聴きに来ませんか」とお誘いしたところ、ひとつ返事でOK。
10月19日にお見えになったときのコンビの復活でN松さんと真空管アンプを自作されるN島さんのお二方が13時10分頃にご到着。
歌謡曲、クラシック、ジャズと次から次に試聴。
N島さんは前回のときはウェストミンスターの試聴だけだったので「80」については始めて耳にされるとのこと。
「噂には聞いてましたが実に繊細な音を出しますね。こんなに”抜け”が良くて艶やかで楽器の音色を素直に出すスピーカーは聴いたことがありません。まったく言うことありません!」と感激の面持ち。
N島さんの知り合いに高齢のオーディオ・マニアがいてガラードのプレーヤーは譲ってくれたものの、どうしても「80」だけは手放さないのだという。「もう鳴らしていないのに」である。
「道理で手放さないワケが分かりました」
「ほう、そんな方がまだいるんですか?「80」を欲しがる人は沢山いますけどオークションにも滅多に出ないし、まず手に入りません。」
「自分もスペアで2本持ってますがもっと欲しいので○○万円出してもいいですよ」と、持ちかけてみたが「おそらくダメでしょう」とN島さん。
「現代のメーカーはなぜ80のようなSPユニットを作らないんだろう」「逆起電力の問題があるのでスーパー・ツィーターには別に専用アンプを準備したほうがいい」など、いろんな意見交換が出来てタメになる試聴会だったが、「我が家の音」にお二方が素直に喜んでくれたのが何よりだった。