真空管アンプの自作マニアの方々がよく愛用しているのが〔株)サンバレーの「ザ・キット屋」さん。
ネットには「店主日記」などが公開されており愛読者が多いが、愛好家たちの情報交換の場として「キット屋倶楽部」というコーナーが設けられており、一部のマニアがコラムを寄せている。
メル友の名古屋の「Y」さんもそのうちの”お一人”で「私のオーディオ人生」と題して既に21回も連載されている。
そのYさんから最近、「第22回目のコラムを掲載しました」とのご連絡があったので早速アクセスしてみた。
題名は「20cmフルレンジスピーカーを鳴らす!」
内容に興味のある方は上記をクリックしていただくとお分かりのとおりだが、オーディオに対する考え方が自分と似通っていて、音のほうもいかにも「好みの音」が出てきそうなシステム。
いたずらにレンジを追い求めず音楽的に心地よい響きを求めてのアプローチである。
これを「PP5-400」とか「WE300B」の名出力菅で鳴らすのだから、もうたまらない。
Yさんと知り合ったきっかけはそもそもお互いに古い英国製のSPユニットを愛用していることからだった。
Yさんはグッドマン社のユニットを使った3ウェイシステムを自作のボックスに収納しておられ〔この辺は「私のオーディオ人生」に詳しい)、自分は同じグッドマン社の「アキシオム80」をこれまた自作のボックスにというわけ。
さらに「メーカーお仕着せのSPシステムはサラサラ使う気になりませんよね」というのも共通点。
SPボックスの自作となると、構造、材質、吸音材、ネットワーク(コイル、コンデンサー)、位相の問題などに気を使ってそれはそれはたいへんな苦労を伴うが、それだけに楽しみも倍以上になるといっても過言ではない。
もちろん自作の限界があるものの、世界で”唯一の音”というのがこたえられない。
実は、このところSPユニット「アキシオム80」(守備範囲200ヘルツ以上)を2発にして鳴らしているがいまだに2発を1発にしたり、再び2発に戻したりと「二転、三転」中。
「駄耳」はとかく無駄な回り道が多くて困る!
何とか2発のままで大編成や小編成の演奏がうまく鳴らせないものかと、この2週間あまり悩んだ末にようやく窮余の一策を思いついた。
それはアキシオム80を収納しているボックスの裏蓋の開放。
これまでは羽毛の吸音材をぎゅうぎゅう詰めにして密閉型で使用していたのだが、今度は吸音材はそのままにし、裏蓋だけ取っ払って、ユニットの前後の振幅を楽にしてやろうという魂胆である。
当然、ボックスの背後に放出された位相の違う〔逆相の)音がSP正面の方に回り込んで〔正相の)音の邪魔をしてくるが、波長の長い低域音は(アキシオム80の)守備範囲ではないので幾分か情状酌量の余地がありそう。
とにかく、やってみなければ分からないと実験してみたところ密閉のときよりはメリットが大きい印象。
音の締まりは少なくなるものの、窮屈そうな感じがなくなって伸び伸びと鳴ってくれる感じ。
ただし、難点を挙げると音を目方に例えるとちょっぴり”軽く”なった気がするし、”タメ”がなくなる感じもある。
まあ贅沢を言うとキリがないのでこの辺が”妥協点”かと思っていたところ、悩みを打ち明けていたYさんからメールが届いて「裏蓋の開放スペースを調節してみたらどうですか」との「ありがたいアドバイス」。
「なるほど」と「目からウロコ」。
これまでの白か黒かの二者択一に、新たに灰色という選択肢が加わったというわけ。さらに、その灰色にしても白に近い灰色から黒に近い灰色まで無数にある。
さて、問題は「どういう具合に調節して開放しようか?」。
楽聖ベートーヴェンはハイリゲンシュタットの森を散策しながら名曲の楽想を得たという。
「ベートーヴェンを引き合いに出すなんて、お前は身の程知らずのバカか」と罵られそうだが、自分の場合は毎日通っている運動ジムで無心になって漕ぐエアロバイクの最中に名案が浮かんでくることが多い。
今回は「裏蓋にドリルで沢山の穴を開けたらいいかも」とのアイデアがフット浮かんだ。
「よし、やってみよう!」
早速、家に戻ると”穴開け開始”。18日〔日)の午前中のことだった。
どのくらいの穴の数がベストなのかサッパリ分からないので、とりあえずSPユニット〔20cm口径)の範囲に絞って1cm口径の穴を適当に開けてみた。
次から次に出てくる”木くず”の処理がたいへんで「また散らかして~、後でちゃんと掃除してね」とのカミさんの声を背に受けて馬耳東風。
思ったよりも手間が掛かって左右ペア〔計)4枚で7時間程度の作業だった。ただし、かかった経費は1cm口径のドリルの刃代金の670円だけ。
ワクワクしながら取り付けネジを締めてボックスに装着。
次が装着後の写真。上の裏蓋が最上段、下が2段目のアキシオム80の分〔右チャンネル)の裏蓋。
これで試聴してみるとウーム・・・。
「いい音」とは(自信が持てないので)言わないが、程好くバランスが取れていて、これまで我が家で聴いてきた中では一番”好み”に近付いた音のような気がする。
オーディオはやっぱり”おつきあい”と”情報収集”が大切で孤立していたら前進が望めないことを改めて痛感した。