先日のこと、ここ3年ほど何となく交流が途絶えていたオーディオ仲間のYさん(大分市)からご連絡があった。
「メチャ高価なCDトランスポートを購入されたそうですね。参考のために一度聴かせていただけませんか?」
「ええ、お安い御用ですよ。時代遅れのCDトランスポートですからわざわざ来ていただくほどのことはありませんが、お暇なときにいつでもどうぞ~。」
そして、31日(土)の午後にいよいよ実現の運びとなった。
さて、Yさんのお好みのジャンルは何だったろうかと、思い出しながら無難なところで「ちあき なおみ」あたりからスタート。
はじめに「ラ・スカラ(dCS)でJBL3ウェイシステムを鳴らしてみた。その後、お望みどおりワディアのCDトランスポート「270」で比較試聴。
それが済むと、今度はスピーカーを「AXIOM80」システム(アンプWE300B:指定オリジナル・エンクロージャー)に切り替えて同じことの繰り返し。
面白いことに、JBLシステムのときはワディア270の方がお好みだったようだが、AXIOM80のときは「ラ・スカラ」の方がお気に入りだったご様子。CDソースの録音状態でシステムの持ち味はある程度左右されるし、個人の好みもいろいろで、けっして一方的な結果に終わらないのがオーディオの面白いところ。
まったく「素の音ですね」というのがAXIOM80へのYさんの評価だったが、思わず「素数」(自分以外の数で割れない数でたとえば、2、3、5、7、11、13・・・)を連想した。
「そうか、AXIOM80が奏でる音とは素数なのだ」。つまり、「これ以上分解できない音」というのは実に面白い発想(笑)。
2時間ほどきいていただいたところで、今度はところをかえて、当初の予定どおりYさん宅の音をきかせていただくために大分へと出発。
昨年の5月にオーディオルームを新装されたそうでこのほどようやく満足できる音が出るようになったとのこと。およそクルマで30分ほどで到着。市内中心部にある、ご自身がオーナーとなっておられるビルの1階の大広間がオーディオルーム。
威風堂々たる3系統のシステムが置いてあった。
まず向かって正面に2系統のシステムが鎮座していた。アルテックの2ウェイ(音研のエンクロージャー)とオールホーンの4ウェイシステム。
オールホーンシステムの方は主にクラシック用で低音域がYL1250のドライバー(重さ50キロほど)でクロス200ヘルツ、中域はゴトー・ユニットのベリリウムで朝顔ホーン、中高域、高域もゴトー・ユニットでいずれもベリリウム仕様。
3つ目のシステムが側面の壁側に設置してあるバーチカル・ツウィン。どちらかといえばジャズ主体のシステム用。
これは3ウェイマルチシステムだそうで、チャンデバ(F25)を使って、ダイナコ、マッキントッシュ275、マランツのパワーアンプで各ユニットを駆動。
Yさんも自分と同様に、既成のスピーカー・システムをポンと置いて楽しむタイプではないようで、いろいろと手を加えて楽しんでおられるが、3系統とも実にうまくまとめてあってこれらに順番を付けようなんて気が起こらないのが不思議(笑)。
他家での試聴に臨むときには日頃、我が家で聴き慣れている「AXIOM80」の音を常に頭の片隅においているが、ここで繰り広げられる世界はまるで異次元のようで、一言でいえば剛直感に満ち溢れたものだった。
「AXIOM80」が「木の香りがする音」とすれば、鉄製のホーンのイメージがあまりにも強烈なので「鉄の肌触りが感じられる音」という表現が当たるかもしれない。ズッシリとした重心のもとで少しの共振も許さないような緻密な音という印象を受けた。
ずっと聴いていたかったが、夕食時になったので1時間半ほどで辞去したものの、後日ゆっくり時間をとって再びきかせてもらうことにしようと思った。
帰りがけに「オーディオは仲間たちと一緒にワイワイ騒ぎながらきくのも楽しいものですね。」とのYさんの言葉に納得。
「オーディオは他家の音を沢山聴けば聴くほどレベルが上がりますからね~。そういう意味では日頃から人的交流の側面がありますよ。趣味を通じてそれぞれの家庭の往来が出来ることってなかなかないですから、これからもよろしく~」と、申し上げた。
次回はもっと沢山のテスト盤を持っていくことにしよう。