このところ「どんなにいい出力管を使っていても整流管がダメだと台無しですよ~」というオーディオ仲間の言葉が気になっている。
真空管アンプにおける整流管の役割は周知のとおり「交流を直流に変える」ことにあるが、整流管の替りにダイオードを使用する方も多い。
どちらの方式がいいか悪いかは別にして規格さえ合えば整流管の差し替えをしながら音質の変化を楽しむのも真空管アンプの楽しみの一つである。
直熱管の「5R4GY」「5U4G」、傍熱管の「CV378」「GZ34」「GZ32」「WE422A」などが楽しみの源泉だが最近耳よりのニュースが入った。
ある国産メーカーの往時の製品「5R4GY」が、当時のウェスタン社の技術提供により名管「274B」に優るとも劣らない能力に仕上がりながらも安価でオークション市場に流れているという話を耳にして、つい最近、試しにこのメーカーの「5R4GY」を落札して使ったところ期待にたがわない音質で驚いた。
価格は「274B」のおよそ1/10以下だから、これはたまらない(笑)。
しかし、残念なことに我が家の真空管アンプのうち1台だけ整流管の差し換えが利かないモノがあって、それは「2A3」アンプの「5X4G」。
この球だけは通常の整流管とピンの配列が違っていて異質となっているわけだが、配線をちょっと変えるだけで他の球との差し換え可能になるとのことなので、このくらいの修理でいつものMさん(奈良)のお手を煩わすのもお気の毒なので、大分市にお住いのNさんにお願いすることにした。
17日(火)の午後、梅雨特有の雨が降りそぼる中を濡れないようにアンプを梱包してクルマで40分程のNさん宅へ向かった。
ベテランの技術者のNさんのことなのでひと通りの説明により、すぐに「了解しました。それほど時間はかからないと思いますよ」との言葉を得てひと安心、しばらく預けることにしてあとはご愛用のアルテックのA7をきかせていただいた。
プリアンプはマッキントッシュの「C28」、パワーアンプは「WE300B」シングル(モノ×2台)で、思わず「雰囲気のいい音ですねえ!」。
プリアンプの「C28」はつい最近入れ替えられたそうで非常に柔らかい音を醸し出していたが、元のアンプは現在オークションに出品中とのことで部屋の片隅に寝転がっていた。
トランジスター式のプリアンプでGASの「テドラ」という初めて名前をきくアンプ。
1976年製で当時の価格で66万円もする高級アンプで、オークションに出品するに当たり古くなったコンデンサーなどほとんどの部品を入れ替えられたそうで、その交換した部品がビール袋にはちきれんばかりとなってアンプの傍らに置いてある。
どうせ不要になってオークションに出すのなら手間をかけることなく出品するのが通常だが、「出品するときはこうありたいものだ」と、改めてNさんの律義さに感心した。こういう良心的な処置が施されたアンプなら安心して使えるとパッと閃いた(笑)。
Nさんが手放された理由は「ちょっと音が硬いところがあります。ボリュームを上げると元気が良くなるようです。」とのこと。
トランジスターの音はあまり好みではないが、パワーアンプと違ってプリアンプならそれほど違和感もあるまいと思ったし、かねてから自宅のJBLシステムの低音域の伸びと締まり具合にほんのちょっぴり不満があったので、「これ、お借りして自宅で試聴していいですか?」
「ああ、いいですよ」と、ご快諾を得たのでいそいそとクルマに積みこんで持ち帰った。整流管の配線改造のお願いから始まって思わぬ展開になってしまった。
自宅に設置して配線を完了すると、まず、たちどころにアンプの性質を露わにする「AXIOM80」に繋いで聴いたところ、雰囲気感は真空管アンプに一歩譲るが、ローエンドの伸びや音の締まり具合には一日の長があって、「なかなかいける!」というのが第一印象。
次に本命のJBLシステムの低音域(D130)のパワーアンプを、ケンウッドの「01A」にかえて、プリ、パワーとDCアンプ同士で接続すると、たしかに真空管アンプにはない良さが見受けられた。中高音域の柔らかさは真空管アンプじゃないと無理だが、低音域はDCアンプに捨てがたい味がある。もちろん好き好きだがあのボワンとした「ふやけた低音」が出ないのが何よりもいい。
さっそくNさんに「このプリアンプは我が家のシステムと相性がいいようですよ。」と連絡したところ「それではまだ入札が1件もありませんからオークションを止めましょう。」とのご快諾。
安価で手に入れたプリアンプだが、この能力にしては思わぬお買い得となった。
そしてお願いしていた2A3真空管アンプの改造が終了して、昨日(20日)取りに行った。配線処理がうまくいって、規格さえ合えば5X4Gも含めて、すべての整流管が使えるようになったので非常に楽しみが増えた。
今回の件を称すると、いい意味で「犬も歩けば棒に当たる」ということかな~(笑)。