このところ、読むもの、観るものすべてが面白い。
まず「読むもの」の方からミステリー3冊といこう。
☆ 祈りの幕が下りる時
東野圭吾の本ってどうしてこんなにいつも面白いんだろう。矢継ぎ早に次から次に本を出すベストセラー作家によく見られるような当たりハズレがないところが凄い。このブログもあやかりたいところだ(笑)。
本書でも冒頭から読者をグイグイ引っ張っていく。ミステリーなので未読者に対してネタバレが怖くて思う存分に書けないところがつらい。
最大公約数的にネットで拾わせてもらった書評の中から最適だと思ったものを引用させてもらおう。
「重厚な映画を一本観たような読後感。とても複雑な感じがしたけれど、元はと言えば一組の夫婦が破綻した事から全てつながっているのだ、と納得しました。こういう組み立てができる東野さんは流石です。 」
結局、松本清張の名作「砂の器」の「東野版」と考えればよろしいようで。
先日の3連休(16~18日)に帰省した娘も同じミステリーファンなので、本書を是非読むようにと薦めたところ、「絶対に筋を言ったらダメよ!文庫本になるのをじっと待ってるんだから。」と強い調子で反撃を喰らった(笑)。
2013年刊行の本だから、文庫化は通常3年後として今年中には出版の運びとなるだろう。
続いて、
☆ 緑衣のメトセラ
ミステリーの楽しみは犯人探しももちろんだが新しい才能との出逢いも楽しい。福田和代さんの本は初読みだったが、なかなかイケルという感想を持った。
本書の概要はこうだ。
認知症の母を抱えた貧しく駆け出しのライターあき。母親の世話と小金を稼ぐことに明け暮れる展望の見えないある日のこと、近所の高級老人ホームではガン罹患率が異常に高いことを知る。
持ち前の好奇心と記事のネタ探しも兼ねて、仲間を通じて探索を始めたところ、病院に潜入したその仲間が事故に遭って急死してしまう。それを糸口にさらに深入りしていくと次々に不審な出来事が起こり、ようやく点と線がつながって病院の秘密が暴かれていく。
葉緑素を取り込んだ哺乳類とか、誰とも争わずに光合成で生きていきたい、とか最近の日本人らしい発想のサイエンス・ノーヴェルの要素もあって楽しくなるが、ラストにもうちょっと一工夫あるといいような気がする。惜しい~。
しかし、本書は福田さんのほかの本をもっと読みたいという気にさせてくれた。
ちなみに、福田さんは「神戸大学工学部」卒業、冒頭の東野さんは「大阪府立大学電気工学科」卒業とお二人さんとも工学系出身だ。さらにスケールが大きくなると現在のヨーロッパで君臨する女帝「ドイツのメルケル首相」は物理学者出身だ。
文系に比べて理系はどちらかというと地味でコツコツと粘り強いタイプが多いようなので大器晩成型が多いのだろうか。ちなみに筆者も理系の端くれだが小器晩成型なのがつらい(笑)。
以下、次回へ続く。