前々回からの続きです。
これまでのオーディオ人生を振り返ってみると機器の故障の頻度が半端ないほど高い。
たとえばSPユニットのビビリ音などの不調をはじめアンプでは真空管や部品、さらにはCDトラポのトレイのトラブルなど枚挙にいとまがない。
とはいえ、そもそもオークションで手に入れたときから中古品がほとんどなので、仕方がない面も当然ある。まあビンボー性による自業自得の面もありますかね(笑)。
ただし「ピンチはチャンス」のところがあって、故障のたびに復元過程で何かしら新しい発見があるので、今ではすっかり慣れっこになって徒に慌てることも無くむしろ「ウェルカム・トラブル」の境地だといってもいいくらい。
今回の「300Bシングルアンプ」もその例に漏れなかった。
電解コンデンサー(4本)の故障によって派生した問題点にあれこれ対処するうちに新たな発見があった。
たとえば、左右の両チャンネルに違ったブランドの出力管を挿し込んだときにどのくらいの違和感があるかというテーマは興味深かった。
なにしろオーディオの世界では左右両チャンネルに対して何から何まで同じものを使うという固定観念に対して拭い難いものがあることはご存知のとおりですよね。
左側に差し込んでいるのが少々くたびれ気味の「WE300B」(1967年製)、右側が中国製の「ゴールデン・ドラゴン」の「4300BLX」である。
ちなみに、お値段はといえば「WE300B」は衰えたりとはいえ少なくとも時価で10万円以上はすると思うが、ゴールデン・ドラゴンの方はオークションで新品同様を1万円で手に入れたものである。
この対照的な「左右ごった煮」で音楽を聴いてみたところまったくと言っていいほど違和感を感じなかったのは驚きだった。
ただし、自分の耳にはあまり信頼をおいていないので(笑)、仲間に来てもらって確認してもらったのが去る4日(日)のことだった。
初めに、スピーカーを「AXIOM150マークⅡ+ツィーター」にして聴いてもらったところ、「左右の違いは判りませんね」。
次に、同じグッドマンの「トライアクショム」(口径30センチの同軸3ウェイ)にして聴いていただいたものの、これも「いくぶん、全体的に音の明瞭度が上がりましたけど、これも左右の違いは判りません」。
さあ、ここでいよいよ真打の登場である。
繊細極まりない音を出す「AXIOM80」にすれば、はたしてどういう結果が出るか、もう「ワクワク、ハラハラ」である(笑)。
自作のエンクロージャーからバッフルごと「トライ・アクショム」を引っ張り出して「AXIOM80」を取り付けるのに10分くらいかかっただろうか。
ちなみに、この自作のエンクロージャーは旧い英国のユニットを適度に箱鳴りさせるために板厚をわざわざ薄めの「1.5cm」にしており、バッフルごとユニットを取り換えられるように「ネジ付きのナット」を6か所埋め込んでいる。自画自賛ながら効果は絶大ですぞ(笑)。
なお、この作業を見守っていた仲間がエンクロージャーの中を見て「凄い補強をやってますね」「ハイ、補強はうまくいったのですが、竹を4隅に取り付けた時に手が滑ってドリルで右手の親指を突き刺してしまい出血が止まらないので夜間に救急病院に駆け込みました。未だに後遺症がありますよ、ほら・・。」
まさに「血と汗と涙」の結晶である(笑)。
さあ、いよいよ音出しである。試聴盤は仲間が持参してくれた古代ギリシャの音楽。
古楽器によって宮殿の厳かな雰囲気や佇まいが再現できれば合格というところだが、「やはりAXIOM80の情報量が一番ですね。前後の音声信号が重なって起きる不自然な”潰れ”がありません。音の粒立ちが桁違いにいいです。ただし、これでも左右のチャンネルの違いは判りませんよ」
ああ、よかった!(笑)
高級管と低級管との見事な調和というべきだろうが、ことはそれほど単純ではなく、そして普遍的でもなくアンプのツクリ自体も大いに関与しているであろうことは想像に難くない。
そこでこのアンプを改造していただいた北国の博士に伺ってみたところ、
「左右チャンネルの真空管の違いはモノラルで聴くと違いがわかるでしょうが、ステレオで聴くと分かりづらいかもしれませんね。
何らシガラミのないアマチュアなんですから既成概念にとらわれずジャンジャン風変わりなことを試して楽しまれるといいと思いますよ。
なお、このアンプはエミッションが少なくなった出力管でも十分鳴らせるように特別な対策を施していますから少々”へたった”WE300Bでも長期間いけると思います」
とのことだった。
いわば「太くて短い人生」と「細くて長い人生」のどちらを選ぶかに尽きるのかもしれない。
それにしても、トラブルのたびごとに何かしら新しい発見があるのでとても楽しい~。
また、どこか故障しないかなあ。
ここまでくると、もう”へそ曲がり”の域かもですねえ!(笑)
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