前回からの続きです。
「音楽&オーディオ」に夢中になる二番目の理由は次のとおり。
2 芸術鑑賞
「音楽&オーディオ」のいいところは日常生活の中で手軽に一流の「芸術」に親しむことができるところにある。
モーツァルト、バッハ、ベートーヴェン、ワーグナー・・・。
ここまで書いてきて、ふと何の脈絡も無しに「一流の文化や芸術はその底流に死を内在させている」という言葉が浮かんできた。
仰ったのは「河合隼雄」(かわい はやお:故人)さん。河合さんといえば元文化庁長官で国際的な「ユング心理学」の第一人者だ。
以下、少々分け入ってみよう。
「この言葉の出典は2002年12月24日号の「エコノミスト」誌に特別寄稿されていた「現代病が中高年を襲う」だ。
この記事は当時社会問題となっていた中高年の自殺についてその原因と対策を心理学の立場から分析したもので、およそ20年前のテーマだが現在でもいささかも古びていないと思う。
少々舌足らずだが要約して、箇条書きにしてみた。
✰ 人生の前半と後半では生きることの意味が変化することに早く気づくべき。つまり、前半は地位、財産が向上するが、後半は死に向かって下降していく
✰ 中年期は価値観の転換とともに「老」「死」に対する準備を始める時期
✰ そのためには、仕事だけでなく幅広く文化的なことや芸術に関心を向ける
✰ 一流の文化や芸術はその底流に「死」を内在させていることに気付くことにより、「死」をいかに受け止めるか自然と考えるようになる。
✰ しかし忙しい現代人にはあまり悠長なこともいっておられないのでとりあえず「こころの出家」を薦める。
✰ 「こころの出家」とは、日々の生活の中で今まで居たところから「出て」外から自分を眺めてみること。
つまり、大要は「中高年はもっと異なる文化や芸術に関心を持ち、心のゆとりを持って自分の世界を広げてみよう」ということのようである。
幸い音楽を通じて「こころの出家」は自分なりに実行しているつもりだが、前述した「一流の文化や芸術はその底流に”死”を内在させている」の真意がちょっと分かりづらい。
たいへん含蓄に富む言葉だと思うがこれは一体どういう意味だろうか?
人間はたかだか80年程度の回り舞台から消え去っていくだけだが、一流の芸術作品は何代にも亘って朽ち果てない永遠の生命力が吹き込まれていることと関係するんだろうか。
「死は最良の友だちです」とは父親あての手紙に書き記したモーツァルトの言葉だし、「五味康祐」さん流に解釈すると「一流の芸術には神がある。神とは民族の発生から終末にいたるその民族の人格に他ならない」と、人間を超越した神の存在に言及している。
最終的には河合さん本人に真意をお伺いするのが一番よいのだが、既にお亡くなりになっているので永遠に未解決だ。
しかし、むしろこうしたテーマは漠然とした意味のままに折にふれときどき考えることに意義があるのかもしれない。
以上、柄にもなく少々高尚なことを書かせてもらったが(笑)、この際だから音楽とオーディオの関係に言及しておくと、音楽に対する根源的な愛情が無い限りオーディオという趣味は長続きしない。
次に「音楽&オーディオに夢中になる」3番目の理由については長くなるので次回以降へ続く。