「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

ミステリーの「手練れ」

2024年11月02日 | 読書コーナー

「読書の秋」にふさわしく3か所の図書館、つまり県立図書館、地元の別府市図書館、そして隣町の日出(ひじ)町図書館を巡回しながらほとんど目いっぱいの借り入れ限度(1館あたり10冊)近く借りてくる。

タダだと思って多少意地汚いところがありますな~(笑)。

で、隔週、30冊近く新刊本を中心に目を通しているが、実は最初の1/3ほど読んで「これはダメだな」あるいは「相性が悪い」とそのまま読み捨てにする本がほとんどである。

特に、若手のミステリー作家にはガッカリすることが多い。

導入部の書き出しがいかにも堅苦しい印象を受ける。おそらく、会社勤めなどの組織に縛られたくない自由人を目指して、机に張り付いて一生懸命に頭を絞って書き下ろしたのだろう・・、そういう熱意は感じ取れるものの残念なことに筆力が追い付いていない。

モーツァルトのように自由奔放で自然な楽想みたいなものが欲しいなあ~(笑)。

ま、「未完の大器」なんだろうが、現代は皆、気が立って忙しい世の中になっているので時間が悠長には待ってくれない、デビュー作で(売れ行きが悪くて)脚光を浴びないとそのまま埋もれていく可能性が高いだろう。

その点、ベテラン作家の作品には安心して目を通せる。

日本のミステリ―作家では、「東野圭吾」さんに次いで「中山七里」さんにも大いに注目している。とにかく多作なのに余りハズレがないのには感心する~。



つい最近、これら3冊の本に目を通したがいずれも読み応えがあって、まさに「手練れ」(てだれ)という表現がピッタリ~。

まずは「ネメシスの使者」から「ネットレヴュー」を引用、

「極刑とは果たして死刑なのか…無残に殺された被害者とその家族が犯人に求めるものは何なのか…復讐が認められない法治国家で、死刑を回避した犯罪者に対する憎悪の気持ちをどうすればよいのか… 塀の中で守られている犯罪者に代わって、その家族を同罪とみなし仇討ちを行う行為に世間は同調する。

ネメシスの使者の正体に驚くが、本当の目的は別にあった…うーん、やはり中山作品は一筋縄では終わらない。重たいテーマだけど、読む手が止まらず一気読み。復讐する側の執念と計画の緻密さにため息がでる秀逸な作品だと思った。」

刑務所に収監されている凶悪な殺人犯の家族が次々に残忍な殺され方で復讐されていく、はたして「犯人は?」「共通の動機は?」・・。

単なるミステリーに終わらず、「死刑制度」を真剣に考えさせる社会派作品である。

続いて「アポロンの嘲笑」の「ネットレヴュー」を、

「東日本大震災から5日後に発生した殺人事件。被疑者が移送中に余震の混乱に乗じて逃走。失態を演じた刑事が被疑者の行方を追うが、原発の下請けで働いている被疑者は避難指示が出ている福島第一原発に向かって逃走する。そして追跡する刑事の前になぜか公安の影が。

放射能に曝されるリスクを冒してまで被疑者が守ろうとしたものは何か。被疑者には阪神淡路大震災で建屋の下敷きになり両親が命を賭して守ってくれたことにより自分だけが命をつなげたという過去があった。今度は自分が命をかけて大事な人を守る。その決意を秘めた逃避行が日本を救う。」

これも、社会的なテーマとミステリーを上手く溶け合わせた作品でした。

そして、最後に「超合理的!ミステリ―の書き方」がとても面白かった。

要諦は「結末を考えずに書き記していくと、自然にアイデアが浮かんでくる」というもので、先年亡くなられた「内田康夫」
さんが「浅見光彦シリ~ズ」でも同じことを述べられていた。

人間の頭はそれほどヤワでなく、追い詰められば追い詰められるほど順応性が出てくるそうだ。

引き合いに出すのはまことに恐れ多いが、この拙ブログだって書いていくうちに何とか恰好がついていく感じ~(笑)。

なお、本書の中で冒頭に「押さえておきたい古典10選」というのがあった。

秋の夜長にミステリーに読み耽るのも一興です。未読の方はぜひ~。

ヴァン・ダイン「グリーン家殺人事件」、アガサ・クリスティー「ABC殺人事件」「杉の柩(ひつぎ)」、エラリー・クイーン「エジプト十字架の謎」「Yの悲劇」、ウィリアム・L・デアンドリア「ホッグ連続殺人」、ドロシー・L・セイヤーズ「ナイン・テーラーズ」、横溝正史「獄門島」、高木彬光「刺青殺人事件」、島田荘司「奇想、天を動かす」

このなかでブログ主の未読は「杉の柩」「ナイン・テーラーズ」「奇想、天を動かす」の3冊です。

で、古今東西の「ミステリー・ベスト1」は誰が何と言っても「Yの悲劇」でしょう。 

「ありあえない犯人」の意外性にビックリ仰天!(笑)。



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