ミステリーを読むのも大好きだが、エッセイにも大いに心を魅かれる。
いわば、「虚構」と「リアリティ」の二刀流使いともいえる~(笑)。
このエッセイの著者は作家の「黒川博行」氏、(以下「氏」)。まだ一冊も読んだことがないが、直木賞を受賞されているとのこと。
何の前知識もないまま読む続けていくと、何とまあ、ありとあらゆる博打にのめり込む姿が映し出されている。いやあ、こんなハチャメチャな豪快な人が居るんだと驚きました!
誰かが「氏」を称して「黒い川を渡って博打に行く」(氏名から連想)という言葉に思わず腹を抱えて笑った。
さて、その博打の中でもいちばん熱中し歴史が長いのが「麻雀」だった。
ブログ主も学生の頃は大好きで友達と4人で卓をかこっていたが、概してカモられることが多くて弱かった。そのうち才能が無いことがわかって縁遠くなったが、今でも麻雀が強い人は「仕事が出来る」人が多いように思っている。
なぜなら、麻雀を打たせると性格がよく出ると言われており、「アクセル(攻撃)とブレーキ(防御)の適度な調整」「場の雰囲気の読み方」「運勢を味方にするコツ」などが必要とされている競技だから~。
以前のこと、どこかの会社が入社試験で「麻雀大会」をして、上位者に「特別枠」を設けて入社させていると読んだことがあり、この会社の上層部は非常に分かっていると、思わず膝を叩いたことだった(笑)。
さて、本書である。
氏は「麻雀の達人」である。何しろ、他の賭け事で負けた損失を麻雀で一挙に取り返すんだから恐れおののく~。
本書の中に小節「麻雀は運を予想するゲーム」という下りがある。(126頁)
要所を抜き書きすると、
〇 星占いも血液型診断も信じないし、方角がどうとか干支がどうとかいうゲン担ぎもジンクスもいっさい信じません。ただ、麻雀に関してはその日のツキとか場所のツキといったもは確かにある、と思います。
〇 将棋も大好きだが運が勝負を決めることはほとんどない。でも麻雀はツイてれば勝てる。将棋は初心者が高段者に勝つことは絶対にないが、麻雀ならあり得る。だから面白い。
〇 ただツキはずっと続くわけではない。長時間打ち続けると必ず上級者の方が勝つ。技術の差が出る。麻雀の技術には手牌を切る、止めるといった「手牌の技術」と「運を扱う技術」がある。ツイているときはその波に乗り続けて運を落とさない、ツイていないときは傷を最小限に抑えて運を呼び込む、といった、テクニックです。そこで大事なのが「いかにミスをしないか」
〇 ツイているときにミスをすれば自分のツキが落ちて相手に移ってしまう。ツていないときは傷が深くなる。つまるところ麻雀は運のやり取り、奪い合いです。
〇 麻雀って予想のゲームやと思うんです。この牌がきたからこう打つではなくて、どの牌が来たらどう打つか、どの牌が場に出たらどう対処するかをずっと予想しながら打つ遊びなんですよ。
〇 麻雀は想定した一番いい形になるかどうかが運、ツキですよね。ただ基本的には想定しないことが起きるという前提のもとに打たないといけない。自分が想定した最上ではなく、何番目かの牌が来たときにどうするかを考えて準備しておくのが麻雀における技術です。
という調子で延々と続く。
結局・・、「運」のやり取りって麻雀だけではなくて世の中や人生全般に言えることじゃないかあ~、ブログ主には思い当たることが多いです(笑)。
あっ、そうそう、先日の「ワールドシリーズ」のヤンキースとドジャースの対戦の第5戦目、ヤンキースが5点リードしていたのに、守備のミスを3つ続けたせいで運を手放してしまい、同点に追い付かれ最後には敗戦に追い込まれたことは記憶に新しい。
イチローさんが現役時代に「野球はミスをした方が負け!」と言ってたが、その通りとなった。
ミスをする、しないが運を取り扱うコツのようですね~。
なお、本書の中で、「麻雀仲間」として「鷺沢 萌」(さぎさわ めぐむ、通称「めめ」)という女流作家が登場する。氏を相手に堂々と勝つのだから相当な打ち手である。
「めめは生き急いだ。35年の人生に多くのことを凝縮しすぎた」とあったので、ふと興味を覚えてググってみた。
「最年少で文学賞を受賞するなど注目の作家だった。当初は心臓麻痺との発表だったが、実は縊死だった。長年、うつ病を患っていた。在日韓国人で、祖母の隠しておきたい部分に触れたことを書いたら親族から総攻撃にあった。」
歴史作家の「吉村 昭」さんも、エッセイの中で「親族に触れたことを書いたら、えらく腹を立てられた」というのがあったので、「迷惑をかえりみず、つい筆が走ってしまう・・」これは作家の業というものかもしれないですね。
まったく次元の低い話だがこのブログでは小心翼々として他人の傷口には絶対に触れないように心掛けているが、それが本格的な「物書き」になれない証左のようなものかな~(笑)。
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