何かと選挙を避ける安倍政権
2015年15日
日本の安全保障関連法案を閣議で決めた後、安倍首相は記者会見に臨みました。その様子を拝見していまして、「安倍さん、国民、有権者をかなり、はぐらかせていますね」と、思いました。正直に説明していない部分がかなりあり、野党はもっと力をつけて安倍政権を牽制していく必要があります。
首相は「分りやすく丁寧に、必要な法整備であるということを、国会審議を通じて説明したい」と、語りました。安倍支持派の新聞も「複雑な法整備、政府に説明責任」と指摘しています。こうした言い方に違和感を覚える人は多いはずです。丁寧に説明すべき機会があったのに、それしていないからです。
選挙公約には見当たらない
首相は「(昨年12月の)衆院選でも、国民の審判を受けた。選挙で公約をせず、実行するのとはまったく違う」と強調しました。公約で安保法制について触れていたのは、たった一行程度でしたね。具体的な中身は何もなく、これで審判を受けたといえるのですかねえ。
昨年7月には、安保法制改革の概要はかなり事細かに閣議で決まっていました。国民の判断を仰ぐなら、昨年末の総選挙の際に、「戦後最大の安保法制改革。自衛隊の海外活動を拡充、米軍との協力を強化、抑止力向上で日本と世界の平和を確保」という基本路線を、公約になぜ掲げなかったのでしょうか。有権者の半数以上が安倍政権の方針を支持していないので、逃げたかったのでしょう。
民主主義のルール違反
この時の最大の争点は、安倍政権自身が「消費税10%引き上げを先送り。そのことの信を問う」というようなことにしましたね。財政再建か増税先送りかのどちらかか選べといわれ、有権者は楽なほうの「増税先送り」を歓迎しました。この選挙では、安保法制改革の賛否こそ問うべきだったのです。争点から外しておきながら、「選挙は勝った。だから安保法制に支持を得られた」は、いくらなんでも民主主義のルール違反ですよ。
わたしは「政治経済がボーダレス化し、各国の相互依存が格段に強まった現在、一国の安全保障を一国だけで守ることできなくなった」と思います。利害が複雑にから見合う時代にあった安保法制を準備する必要はあります。その点は首相が正論を強調しています。ではなぜ選挙で信と問わなかったのか、残念です。安倍首相は結局、重要問題ほど争点から隠す、争点からはずす政治手法を多用する政権であることを示しています。
今回の法案の閣議決定に先立ち、日米首脳会談や議会演説で、米側に安保法制の改革を説明したことは、順序が逆でしたね。まるで米国が日本の宗主国で、まず宗主国にご報告してから、日本の行動を決めるというやり方ですね。たまたまタイミングの問題でそうなったのではなく、これが安倍首相の本質なのでしょう。
財政再建でも選挙を逃げる
国内問題で今後、重要性を帯びてくるのは、夏にまとめる財政再建の新方針です。「消費税は10%で打ち止めし、その後、議論を封印する。高めの経済成長を目指し、税の増収を図り、財政赤字を減らす。社会保障費は削減する」という選択です。これは見かけはよさそうでも、経済的に極めて実現が困難な道です。
「高めの経済成長」を達成するためだ、あるいは目標を達成できそうにないからといって、国債が増発される可能性があります。「財政再建のための策」が「結局は財政悪化」を招くというのが、ここ2、30年の日本の財政史です。地方財政にも影響が生じる財政について、安倍政権は4月の地方統一選挙前にまとめ、有権者の参考にしてもらうべきでした。逃げましたね。
安倍一強政権というのですから、何を恐れているのでしょうか。国民の嫌がる選択肢、国民が不安に思っている選択肢を堂々と掲げ、選挙に臨むべきですね。
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