維新の党も雲散霧消か
2015年5月19日
大阪を都に改革する構想が住民投票で否決され、主役の橋下代表は政界からの引退を表明しました。引退というほど、政界にいた期間は長くないので、政界から離脱という表現が適切と思います。あるいは政治にはもう興味がないという選択をしたということでしょうか。
橋下氏本人のいわば個人政党でしたから、維新の党は次第に空中分解、雲散霧消していくでしょう。第三極として政界をかき回し、維新旋風で得た衆院40議席、参院11議席はどうなるのでしょうか。民主党あたりに吸収される人も出てくるでしょう。政界再編に動きもあるのかもしれません。
多くが橋下フィーバーで、チルドレンとして当選した人たちです。個人として選挙に勝って生き残れるのは4、5人とかいう見方もあります。共同代表の江田氏も辞任してしまい、さらに後任候補の松野氏の存在感は弱く、政治的力量を評価する人は極めて少ないでしょう。
シングルイシュー型政党の怖さ
橋下氏の政界離脱は、一政党をつぶすことを意味するわけですから、なんとも橋下氏の行動はなんとも無責任だという面もあります。第3極として勢力を広げるには、政策の焦点をひとつに絞ったシングルシュー選挙があっているのでしょう。ですから府と市を融合させ、都市力を高めるというシングルイシューの「大阪都構想」が否定されたら、政党として存続する意義を失い、政界から消えていくしかないのかもしれません。
それでも橋下が政界離脱を思いとどまっていてくれれば、という声は聞かれます。それはどうでしょうか。橋下氏の本当の野心は将来、総理も目指すところにあったと政界通はみています。地域政党として新しい日本に転換させていくところから始める戦略が第一歩でつまづいてしまい、もう国政の頂点を狙うことかなわなくなりました。
総理への道の野心を断たれる
ですから「政界のトップを狙えないなら、もう政界に用はない。さよなら、さよなら」と、なったのですかね。「まれに見る異能の持ち主」、「大阪でこそ生まれた風雲児」、「民放テレビのバラエティー番組が生んだ新人類型政治家」など、様々な評があります。反面、「ヒットラー型の危険人物」、「強引、乱暴、暴走、無神経」という悪評もあり、それは風雲的政治家として生き抜くための条件だったのでしょうか。
弁舌も精神力もあきれるほどタフで、とにかくへこたれない 、めげないという面では、「こんな日本人はいたのか」という思いを持ちましたね。人間としての裏面はともかく、憎めない顔をいつもしていました。「橋下現象」は今後も政治、社会分析の対象としてあり続けるでしょう。
「副首都」と「大阪都」の結合が必要
安倍政権が、憲法改正では共通点がある橋下氏を引き込もうとしていました。住民投票の賛否の表差はわずか1万(0・8パーセント)でしたから、安倍首相が投票直前に大阪入りしていたら、結果はひっくり返っていたかもれません。地元大阪の府議、市議が強硬な橋下反対派とあって、そうした隠し玉はかないませんでした。ともかく、ほんのちょっとしたことで歴史が変わる、あるいは変われなくなるというケースでしたね。
わたしとしては、関西圏の中核である大阪は、日本第二の経済圏であり、府と市が争っているような時代ではない、と考えます。府と市の二重行政によって巨大な価値が失われているのは、大阪圏がその代表例でしょう。人口減が進む時代に、新たな地域行政システムに転換するケースを大阪で成功させ、日本全体に広げていく突破口にすべきチャンスを失いました。
首都直下型震災が「30年以内にくる確率は70%」とされます。東京が大災害で直撃されれば、政治、行政、経済・金融の機能がマヒしかねません。東日本大震災の直後、「第二首都構想」、「副首都構想」の実現が叫ばれ、国家の中枢機能の分散、バックアップ機能の充実などに真剣に取り組むようなるのでは、と期待していました。「大阪都構想」では、この問題にまったく触れられませんでしたね。安倍政権に「大阪都」と「副首都構想」を結びつけ、「大阪都」を大きくクローズアップさせてみる策士がいなかったのは意外でした。
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