頭を抱えていよう日銀総裁
2015年5月8日
4月の地方統一選に向けてのタイミングで、株価が二度も2万円台に乗せ、選挙の終了直後に大台を割り込みました。あまりにも不自然というか作為が感じられたので、「選挙対策で官製マネーが株価を偽装したのではないか」と、思いましたね。
そうしましたら米国の中央銀行総裁にあたるイエレンFRB議長が、米国株について「かなり高い水準だ」(5月6日)と、警告を発しました。異例に低い水準にある長期金利が「急速に動く可能性(株価は急落に波及)がある」とも述べました。金融緩和と超低金利の長期化に伴い、株式投資の過熱など、市場にひずみが生じているというのです。連銀議長が相場水準に直接、言及するのは異例です。
日本の金融市場も同様の構造になっていますし、米国株が崩れると、日本にも波及します。欧州もしかりです。相場のことですから、発言がただちに市場に重大な影響を及ぼすかどうかは分りません。「市場に警戒信号を点滅させ、徐々に調整が進むように」という市場との対話の一環であるのかもしれません。いずれにせよ、世界的な株高は警戒水域に入っていますね。
世界の時価総額は9000兆円
主要国の金融緩和で、株価がどんどん上がり、世界の株式時価総額は9000兆円に達し、過去最高を更新し、世界全体のGDP(国内総生産)に匹敵するとのことです(日経5月5日)。過去に何度かあったバブル崩壊の水準にきており、要注意だそうです。
それにしても米国の中央銀行総裁は思い切った発言をしたものですね。日本ではまずありえません。かりに黒田日銀総裁が「株価2万円はかなり高い水準だ」と発言すると、株価は急落し、袋叩きにあうでしょう。黒田総裁は「消費者物価上昇率をなんとしてでも2%に引き上げる。金融の追加緩和も辞さない」と、いい続けていますから、その面からも株高警戒論は口には出せません。
黒田総裁はイエレン発言には、「痛いところを突かれた」と、思っていることでしょう。異次元金融緩和の効果は、黒田総裁の筋書きとは、非常に異なる展開となっています。「デフレ脱却のテンポが遅い」、「資産バブルが先行してしまい、資産保有者を富ませている」、「金融による財政ファイナンス(巨額の国債購入による財政支援)にひとしい禁じ手」、「金融緩和が円安を生み、企業収益は改善する一方、輸入物価があがり、消費者と中小企業が困惑している」など、様々な指摘が聞かれます。ここで株高が崩れたら、緩和のマイナス効果のほうが目立ってくるのです。
政権は財政健全化を後回しか
黒田総裁が本当に困りはてているのは、安倍政権が財政再建計画を大幅に軌道修正する作業に入ったことでしょう。「消費税は10%で打ち止め、これ以上は議論を封印」、「財政健全化は高成長(実質成長率2%以上)を前提とする」という方針をメディアにどんどん書かせています。
この段階でもう早々と消費税10%以上を断念ですかね。OECD(経済協力開発機構)は対日審査で「日本は消費税15%に」との報告書を4月に発表したばかりです。安倍政権は選挙のことばかりに気をとられるようですね。その代わり、公共投資を増やして経済成長率を高め、税収を増やす。さらに歳出は社会保障を中心に切ることは切るという組み合わせです。
公共投資は国土強靭化の名のもとに、5年で70兆円計画(二階自民党総務会長)が浮上しています。日銀に国債を実質的に引き受けさせるのですね。70兆円の財政出動をすれば、その時点ではGDP(国民総生産)が増え、税収も増えることは増えます。問題は財政による景気刺激効果は、どんどん低下しており、増発した国債を回収できるほどの税収増は上がらないことです。
財政頼みの結果が債務残高1000兆円
「財政出動による景気下支えで、税収も増やす」という選択を、政治は何度、繰り返してきたことでしょうか。効果があったように思えたのは、その当座だけのことでした。結果は無惨で、その挙句が国の長期債務(国債が中心)の残高が1000兆円という先進国最悪の事態を招いているのです。また、架空の机上計算を振りかざして財政を悪化させるのでしょうかね。
黒田日銀総裁はどうでるか。「国債を購入(実質的な引き受け)するにも、限度がある」と、安倍政権と対決する決断力はあるのか。「日銀に積もり積もった国債を減らしていく出口戦略を考えなければならない」と、いいだす勇気はあるのか。相当に難しい局面を迎えました。
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