新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ

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医療事故の陰に潜む闇

2015年04月21日 | 社会

技術進歩に追いつけぬ医師の技量

                       2015年4月21日

 

 ひどい医師がおり、ひどい病院がありますね。群馬大学病院、千葉県ガンセンターで、医師による執刀で何人もが命を落とし、大騒ぎになっています。医療技術がどんどん進み、そのお陰で実に多くの患者さんの命が救われているのも事実です。この落差の大きさに恐怖を覚えます。

 

 誤解のないように申し上げておきますと、わたしは優れた医師、素晴らしい医療の進歩のお陰で、以前なら命を落とすか、重病を招いていたであろうところを助けられています。頭部の出血で意識や体が変調をきたす硬膜下血腫、放っておいたら脳梗塞を起していたであろう不整脈は完治しました。わたしの周辺の知人、友人には、医師や病院にひどい目のあわされたという人はまずいません。ほとんどの人は安心して医師にかかり、安心して病院の世話になっています。

 

 信じがたい医療事故、医療ミスがおきても、医師や病院はばれない限り、沈黙を通す。このようなケースが後を絶たないのが問題です。このため、犠牲者が次々にでる。事故やミスではなく、未必の故意ともいえる事件なのです。わたしの年齢からして医療に関心の持つ人も多く、こんなことだろうという見方を紹介しましょう。

 

 高度化する技術、修練できない医師

 

 さまざまな原因があるでしょう。その中で最も大きいのは、目覚しく高度化した医療の進歩についていけない医師が増え、そのくせ難しい手術を無理にやるものだから、失敗が次々におきる。今回、事件になっている腹腔鏡手術はその好例でしょう。画像処理を含めた医療技術、医学知識のほうが先に進んでしまい、医師という人間のほうがおいておきぼりを食うのです。内視鏡手術は一見、やさしいそうで、相当、修業を積まないと、ちょっとした手先のぶれでメスが周りの血管を傷つけてしまいます。

 

 少数の科学者、研究所の努力によって、さらに医療技術は高度化、先端化します。これについていける優秀な医師も当然います。一方、ついていけない医師も増え続けるでしょう。技量の劣る医師は引っ込んでいればいいのに、それがなかなかできないのです。先を争って先端医療を取り込んでいかないと、病院間の競争に落伍するし、利益もでないのかもしれません。

 

 医師のレベルが落ちているという問題もあるでしょう。技術レベルとは相対的なもので、医療技術の高度化との見合いで決まるのでしょう。技術の進歩に見合った技量を持つ医師は不足します。一般論でいうと、落ちこぼれた医師が多く集まる病院もあるようで、そうした病院ほど重大事故をしばしば起すとか。

 

 情報の共有化を阻む閉鎖社会

 

 医師間、病院間で情報をもっと共有し、事故を防いだらと思いますよね。それが違うのです。医師間の競争は厳しい。情報を共有していたら競争に負けてしまう。今回の事故でも、病院側の管理体制、倫理審査体制の不備が指摘されています。医療の世界はそれがなかなか難しいのですよね。常識が通用しない閉鎖型社会なのでしょう。

 

 神戸の国際フロンティア・メディカル・センターでも、生体肝移植の手術で、最近、7例中4人が死亡したと報道されました。京大名誉教授と称する院長の応対をテレビが伝えていました。反省するどころか、不遜で、悪びれた様子もなく、このひとは「何者なのだろう」と思いましたね。多額の賠償問題もあって、医療事故、ミスの責任をすぐには認めないことを優先しているのでしょうか。

 

 新未来論における医師の適応能力

 

 将来、医療技術はもっともっと進むでしょう。「科学の急速な進歩が人類に無限に近い繁栄を保障する」という新未来論が装いをあらたにして、米国を中心に力を得ているといいます。遺伝学、ナノ技術、ロボット工学が爆発的に進展し、2040年ころから文明に革命をもたらし、人間そのものを改造するというのです。その代表作「ポスト・ヒューマン誕生」という著作がベストセラーになっています。

 

 抗がん剤を患部に正確に届けるナノボット(ナノ技術とロボット工学の結合)は、医学分野で活躍の予兆があるとか。思想家でもある評論家の山崎正和氏は「人間とは何かを問い直す時がきている」といい、根源的な問いを発しています。わたしは、医療についていえば、問題は医師側がそれをこなせるかどうかにあるように思います。腹腔鏡手術の事故を目の当たりにすると、技術進歩を使用する人間側の適応能力がまず問題になると思いますね。

 

 

 

 

 



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