いま話題の「半沢直樹」は、大手都市銀行を舞台にしたテレビドラマです。組織で働く人間の欲望をシンプルかつ大げさに描いたところに、このドラマが成功した要因があったと思います。
視聴者は、ドラマに出てくる敵役たちの(捻じ曲がった)欲望が、徹底的に叩き潰されることにカタルシスを感じます。言ってみれば「桃太郎侍」のようなものなのですが、舞台が現代の組織なので妙にリアリティがあります。
ドラマを見ながら「こんなにあからさまに口に出して嫌味を言う奴は現実にはいないよなあ・・・」と思いながらも、いつのまにか頭の中で半自動的に自分が過去に出合った「嫌な奴」を検索してしまいます。
その結果「あ!いたいた。こんな奴いたよ。いや、もっとひどかったかも!」となるわけです。すると登場人物と現実の人間が微妙にオーバーラップし始め、いつのまにか主人公に感情移入していきます。
「感情労働」という言葉があります。頭や体だけではなく「感情の抑制、緊張、忍耐などが絶対的に必要な労働」だそうです。感情労働の職種としては看護師、苦情処理、銀行店舗の案内係などがあります。
しかし「半沢直樹」を見るまでもなく、現代の組織での仕事はほとんど感情労働のようなものではないでしょうか。
管理職研修の中には、受講者にやたらにプレッシャを与えて最後に感情を開放し、涙を流しながら「私は変わりました!」などと言わせるものもあります。これは一種のカタルシスを与えるやり方なのでしょう。
カタルシスは一瞬の浄化にすぎません。自分という人間はそんなに簡単に変わりませんし、他人はなおさらです。そんな研修にお金を使うよりも「半沢直樹」を見た方が10倍マシだと思いますが、いかがでしょうか。
(人材育成社)