「真珠の耳飾りの少女(青いターバンの少女)」は日本でもおなじみのフェルメールの作品です。オランダ、デン・ハーグにあるマウリッツハイス美術館が所蔵しています。
1999年、仕事でデン・ハーグに行った際に私は1日休みをとってマウリッツハイス美術館に行きました。「青いターバンの少女」の絵は、他の絵と同じように無造作に壁にかけてありました。私は10分ほど1人で、この絵を間近に見ることができました。
その時の印象は、拍子抜けするくらい「キレイ」でした。ちょうど、修復が終わって間もなかったためか、まるでついさっきアクリル絵の具で描いたような、あるいは、化粧品のコマーシャルに使うカラー写真のようでした。

この美術館でもっとも楽しかったのは、ボランティアのおばあさん(地元の人らしい)が、観光客を引き連れて館内のいくつかの絵を解説してくれたことです。10人ほどの観光客のうち東洋人は私1人でした。
小柄でとても品の良いおばあさんは、まったく癖のない英語でわかりやすく解説してくれました。この美術館自体こじんまりとしているので、1時間足らずの館内ツアーガイドでした。それでも、いくつかの絵に描かれているモチーフの意味や歴史などきちんち解説してくれて、とても興味深く楽しい時間を過ごすことができました。
さて、「青いターバンの少女」で使われている青は日本語でいえば群青(ぐんじょう)色、油絵具でいえばウルトラマリンです。その材料は、アフガニスタン産のラピスラズリという鉱石を使っており、大変高価だったそうです。
私の勝手な推測ですが、フェルメールはラピスラズリの「青」を生かしたくてこの絵を描いたのではないかと思っています。
優れた芸術作品には「これはすごい!」と思わせる強力なメッセージがひとつだけあるように思います。極端かもしれませんが、人間も同じようにひとつだけ光るものがあればそれ以上は必要ないのかもしれません。
(人材育成社)