新入社員が辞めてしまうことは、会社にとって大きな損失です。採用にかけた時間とお金が無駄になるだけでなく、会社の将来を危うくします。今働いている従業員はいずれは会社を去ります。その時に会社を支えるのは「今の」新入社員だからです。新入社員を失うことは会社の将来を失うことです。
前回のブログでも触れたように、新入社員が会社を辞める理由の第1位は「上司との人間関係」です。ただし、それ以前に必要条件とも言うべき事柄があります。
それは「徒労感の無い職場」の実現です。
徒労感とは「行いなどが無駄になり馬鹿馬鹿しい気持ちのこと、または頑張った結果などが報われないで疲れだけが残ったような感覚のこと」です(weblio辞典・実用日本語表現辞典 より)。
たとえば、あなたがあるメーカーの製造部員だったとします。迫りくる納期に間に合わせるために、残業や休日出勤までして製品を作っています。
ようやく山を越え、あと少しと言うところにきて、いきなり顧客からの「キャンセル」の連絡が・・・。営業担当者は「仕方ないよ。先方の発注担当者も謝っていたし。ここで恩を売っておけば、次回の商談が楽になるから。」とお気楽な様子です。
あなたは営業担当者に激怒することでしょう。もの作りの現場で働いたことがなかったとしても、容易に想像できると思います。
しかし、もっと深刻な問題は、出荷されない製品の山を前にしたあなたの徒労感です。「行いなどが無駄になり馬鹿馬鹿しい気持ち」は、あなたの心に澱(おり)のように残ります。
こうして心の底に溜まった徒労感は消えることなく、どんどん積もっていきます。それが仕事に対するモチベーションを下げ、徐々に製品の品質に悪影響を与えます。
特に新入社員はこうした徒労感の影響を強く受けます。「この会社にいると、こんなに馬鹿馬鹿しい気分をずーっと味わうことになるのか」まともな人間ならば辞めたくなって当然です。
上司がどんなにコミュニケーション能力を高めても、経営者が素晴らしい理念を唱えても、社員が立っている土台が崩れてしまっては何の効果もありません。
「徒労感の無い職場」こそ会社の土台であり、社員を辞めさせないための必要条件です。