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「3K」と言えば「きつい・汚い・危険」の略で、主に肉体労働を指した用語と言われています。しかし、現代の経営者が学ぶべき3つのKは「会計(かいK)、統計(とうK)、経済(Kざい)」です。なぜ学ばなければいけないのか、3回にわたってお話しします。今回はその(2)経済です。
経済を学ぶと言えば、日経新聞を読み、WBS(ワールドビジネスサテライト)をみる、そんなことがまず頭に浮かぶかもしれません。景気の見通しや業界動向、新製品の紹介記事など、自社の売上に間接的に、ときには直接影響しますから、まさに生きた経済を学ぶことになるでしょう。
もちろんこうしたリアルタイムで動く「経済」を学ぶことは、経営者にとって非常に大切なことです。ですが、今回は、考え方・ものの見方としての「経済学」をぜひ学んでいただきたいのです。
「経済」と「経済学」を区別しましたが、経済学は経済を客観視するための「軸足」になります。ある市場に関する消費動向はニュースで知ることはできますが、消費者の行動はどのような理論に基づいているかは経済学を学ばないとわかりません。国の財政支出や税率の変化によって景気がどう動いていくのか、なぜそうなるのか、学問的な説明が経済学によってなされます。
経済学の基本的な考え方(思想)は非常にシンプルです。(1)人は効用を求める、(2)資源は有限である、以上です。
効用とは財やサービスによってもたらされる「満足」です。資源とは財やサービスの素となるモノや労働力などです。本来ならば限界効用逓減の法則から市場メカニズムあたりの話までする必要があるのでしょうが、省略いたします(とてもとても面白いところなのですが・・・)。
さて、経済学の考え方(1)です。今、あなたの会社の製品が1つ売れたとします。その製品(財)は、顧客に満足(効用)を提供しました。それは、顧客が財によって得られる効用が、お金を支払うことで失われる損失(マイナスの満足と言っても良いでしょう)を補って余りあるというわけです。
この考え方は単純明快ですが、意外に忘れてしまうことが多いのです。新しい製品を作る、新商品を仕入れる、新しいサービスをメニューに加える、そうしたタイミングでぜひ経済学の考え方(1)を思い出してみてください。ひょっとすると見方が変わるかもしれません。
経済学の考え方(2)は材料や労働力のことだと思ってください。高い値段で売れる製品を作るためには良い材料が必要です。良い材料は当然ですが、競合他社も欲しがります。その材料がもしも無限に手に入るならば、値段は変わらないどころかタダ(無料)になります。それは現実的にはありえません。
労働力も同じです。優秀な人間が無限にいれば何の問題もないでしょう。それも現実的にはありえません。材料にしろ労働力にしろ、品質に応じて希少性(入手できる量が少ない状態)が高まるのです。
このようにたった2つだけの考え方の上に成り立っている経済学ですが、非常に精緻で幅広い体系を持っています。経済学自体は抽象的で学ぶ際には数学もある程度必要ですが、その応用範囲は広く、心理学や数学の力を借りてマーケティングのような「実学」にも及びます。
言うまでもなく経営者は「実学」を身に付け、日々の意思決定に使うべきです。その際、経済学に軸足を置いておけば判断がブレることはほとんどなくなるでしょう。
では、最後に経済学の入門書を1冊紹介しておきますので、ご興味をお持ちの方はご一読ください。
「高校生のための経済学入門 (ちくま新書)」小塩 隆士 (著)
高校生(大学進学をめざす)向けに語っている部分は読み飛ばして構いません。また、最近「流行」の行動経済学(ナッジ理論など)を読むのは、まずこの本を読んでからにすることをお勧めします。