最近「若手社員の早期離職現象」が多くの企業を悩ませています。「大卒で採用した社員の3割が3年以内に辞める」当社はこれを3.3(さんざん)現象と呼んでいます。長い時間と高いコストを払ってようやく新人を採用したと思ったら、一人前になる前に会社を去って行く。まさに会社にとって散々な事態以外の何ものでもありません。
言うまでもありませんが、こうした事態の根底には日本における絶対的な人手不足という国家的な問題があります。しかし、この問題に対処すべき立場にあるのは、首相をはじめとした国の舵取りをする人たちです。
企業ができることは、少ない人材の奪い合いと若手社員を辞めないように引き留めることしかありません。大企業ならば、以前にも紹介したようなリテンションマネジメント(retention management)※は有効です。
では、「ヒト・モノ・カネ」で大企業には到底及ばない中小企業はどうすれば良いのでしょう。
ご推察のとおり、即効性のある対応策はありません。ただ、経営者の皆様に実行していただきたいことが1つあります。
それは「良い会社」を定義し、口にすることです。
拍子抜けされたかもしれませんが、とても大事なことです。
経営者自身が「良い会社」とはこういう会社なのだ、ということを具体的に言えなければ、若手社員を引き留めることなど到底無理です。まず社長自身が「良い会社」とはこれこれこういう会社のことだ、うちの会社はそれに向かって毎日仕事をしている、と信じて口にすることが大切です。
ただし、この定義は「社是」や「経営理念」ではありません。しかも毎日変わっても構いません。
たとえば、お客様が喜ぶようなちょっとした工夫を社員がしたとき「いまやったことを続けるのが良い会社だ」と伝えれば良いのです。
取引先の会社の廊下にゴミが落ちていたら、社長であるあなた自身がすぐにそれを拾って「いまやったことを続けるのが良い会社だ」と伝えれば良いのです。
そうした日々のちょっとした行動が積み重なっていくと、少しずつ「良い会社」に近づいて行きます。もちろん即効性はありませんから、相変わらず散々な状態は続くかもしれません。
しかし、わずか1%の改善でも365日続ければ元の数の37.78倍になります。実行した会社としなかった会社の差は時間が経てば経つほど開いていきます。ですから、信じてやりぬくことです。
気がつけばいつのまにか「人が辞めない会社」になっていた。それを目指しましょう!