「Win-Winの関係なんて現在はありえない。30年くらい前のA社、B社ではあったけれど・・・」
これは先日ある製造業での研修の打ち合わせ時に、経営者から伺った言葉です。
具体的には、営業研修のプログラムの内容についてのディスカッションをしていた際に、この言葉をお聞きしたのですが、A社、B社はいずれも日本のトップ企業です。
今では、たとえトップ企業であっても発注側が圧倒的に有利であり、一方的に短納期や値引きを要求し、受注側は立場的にそれに応じざるを得ない状況とのことです。
Win-Winとは、ビジネスの取り引きの場において、売り手側と買い手側の両者が利益を得ることができる関係のことです。直訳すると「勝ちと勝ち」、「自分も勝つ。相手も勝つ」という解釈です。
このWin-Winと言う言葉は、日本では1996年に出版されたスティーブン・R・コヴィーの「7つの習慣」の中でも紹介されており、それで一気に広まったと記憶しています。
これまで、「営業の使命として現場ではWin-Winを目指すことが大前提」と考えていた私としては、冒頭の話を伺ったときには正直なところとても驚きました。
しかし一方で、我々研修講師の業界においても、研修を提案させていただく企業(顧客)から短納期での提案を求められて、何とか間に合わせるべく睡眠時間を削って必死に作成することもままあります。
しかし、そこまでして完成させた提案書であっても、採用されない場合は先方からは連絡の一本もないこともあるのです。
改めて考えてみると、これではとてもWin-Winの関係とは言えないのは確かかもしれません。
仕事と生活の調和推進官民トップ会議「仕事と生活の調和推進のための行動指針(2010年)の中では、「取引先への計画的な発注や納期の設定」を求めています。
発注側は、受注側に対して一方的な条件を提示したり、それに応えられなければ付き合いの打ち切りを提示したりするのではなく、双方が望む結果を共有し、少しでもWin-Winの関係を共有できるようにする。今の時代にそれを望むことは、もはや幻想なのでしょうか。
しかし、自社の利益の追求だけでなく、それを支える受注側の利益も考える。
きれいごとなのかもしれませんが、もしどちらか一方のみが得をするようなシステムであれば、いずれもう一方は立ちいかなくなってしまうのは明白です。最終的には企業が長期にわたり存続しつづけることは難しくなってしまうのではないでしょうか。
完全なWin-Winの関係は難しいのは事実でしょう。しかし、双方が歩み寄って少しでも利益を共有できる、そういった関係を築いていくことが大事なのだと改めて考えています。