「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
先日、ある商社の人事担当役員とお会いした時のことです。その会社では社員のテレワークがある程度定着してきたとのことで、役員さんは「一息ついた」と少しほっとしていたようでした。
その役員さんは「次の課題は、テレワーク中の社員たちを、マネージャーがどうやって管理するかです。」そういうと、私に意見を聞いてきました。「”リモート・マネジメント”と言うそうですね。具体的な事例をご存じですか?」
「いいえ、知りません。」私は正直に答えました。続けて「”リモート・マネジメント”はリクルートさんのホームページに詳しく記載されているので、参考にされてはいかがでしょうか。」と言いました。
役員さんは意外そうな顔をして「え?人材系のコンサルティングという分野では、リクルートは御社のライバルでしょう?」と言いました。
「いいえ、ライバルなんてとんでもないことです。あちらが象ならうちはアリです。だいいち私は”リモート・マネジメント”という言葉には意味がないと思っています。マネジメントにリアルもリモートもありません。」
「”リモート・マネジメント”って、すごくキャッチ―な言葉ですよね。御社はそれを使わないのですか?」
「はい。当社はお客様に対しても、そうした言葉は使わないようお勧めしています。テレワークに移行する以前からマネジメントというものにきちんと向き合ってきた企業ならいざしらず、そうではない企業が”いきなりテレワーク”から”いきなりリモート・マネジメント”というのは危ういと言わざるを得ません。」
「ではどうすれば良いとお考えですか?」
「”いきなり”はさておき・・・まずテレワークの以前のマネジメントをしっかりと振り返ることから始めます。マネージャー各人のスキルや考え方、部下への日常的な接し方、実践してきた指導方法、そういったものを対面インタビューを通じて洗い出します。その結果を評価して1人ひとりに合ったマネジメントプランを作ります。」
「なるほど、それから”リモート・マネジメント”になるわけですね。」
「まあ、そういえばそうなのですが、”リモート”は手段に過ぎません。もちろん、リモートで注意すべきことや若干のテクニカルなスキルは必要です。しかし”リモート”だから今までとは異なる「モデル」を構築する必要はありません。リモート以前の状態できちんとしたマネジメントができていない企業が、そうした”リモート・モデル”に走ると失敗します。絶対にやめた方が良いです。」
その役員さんは「う~ん」と言って腕を組んでいましたが、少しおいて「おっしゃる通りかもしれません・・・」と言いました。
「”いきなりテレワーク”は、今までのマネジメントの在り方を考え直す絶好のチャンスです。足元をしっかり固めてから”リモート・マネジメント”に取り組みましょう!」と私は言いました。この会社の「後日談」はいずれまた。
さて、みなさんの会社はいかがでしょうか。マネージャーさんはしっかりしていますか?