「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「ある調査によれば、企業理念が明確な企業とそうでない企業の間で、収益に約6.7倍の差があったと報告されています。」ある会社から来た、あるセミナーの案内文です。私は大変興味を持ちました。いえ、企業理念ではなく「ある調査」についてです。
収益に6.7倍の差があったというのは驚くべき結果です。どのくらいの数の企業を調べたのでしょうか?また、調査対象は同業種であることが必要条件です。さらに、同一期間であることも、企業規模もほぼ同程度でなければまずいと思います。
こう書いてしまうと「企業理念の効用を否定したいのか?」と思われるかもしれませんが、もちろん違います。企業理念の重要性は十分に理解していますし、研修やコンサルティングの場で常に口を酸っぱくして説明しています。問題はそこではありません。
「ある調査」のひとことで済ませてしまうことがまずいのです。
営業活動でお客様を説得するときに、何らかの数字を裏付けにすることは効果的です。
「ある調査によれば、この薬を飲んだ方の80%が3か月以内に腹囲が5㎝以上小さくなりました」
「ある調査によれば、対人コミュニケーションの影響度は見た目が93%、言葉はわずか7%でした」
ネットにはこうしたメッセージが溢れています。特に80%、93%といった数字は強い印象を与えます。しかも収益が6.7倍というのはとんでもなく高い数字です。その結果、数字が独り歩きを始め、「ある調査」はどうでもよくなってしまいます。
しかし「ある調査」について出典を明らかしないのは、企業の姿勢として信用できません。「ビジョナリー・カンパニー」からの引用だとすれば、そう書いておくべきでしょう。出典を見て納得できるかどうかはさておき、少なくとも「この人物が調べたことなのだ」という事実は伝える必要があります。
「ある調査によれば、インターネットを一切使わなかった1万人と日常的に使っていた1万人を調べたところ、使っている人たちの方が平均寿命が10年以上長かった。ここまで大きな差を生み出すインターネットの力は偉大だ」
・・・現代人1万人の寿命と江戸時代の1万人の寿命を調査した結果です。