中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

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第1,175話 褒められることを、求めすぎていないか

2023年07月19日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「他者から褒められたときです」

これは、弊社が研修を担当させていただいた際に、演習等で「仕事において、やる気が出るのはどういうときか」を考えてもらう際に、多くの受講者が口にする答えです。

確かに、他者からほめられたり認められたりすると嬉しい気持ちになったり、前向きな気持ちになったりするのは年代に関係なく、共通するところだと思います。私の祖母は104歳まで元気に手芸を嗜みながら暮らしていましたが、手先の器用さや手作りした品を周囲にプレゼントしていることを周囲が褒めると、とても嬉しそうな表情をしていたことを覚えています。また、私が子どもの頃に飼っていた犬は17年生存しましたが、老犬になってから長老であることを市から表彰されたときは、誇らしげな表情になっていたように感じました。

このように考えると、褒められると嬉しいと感じるのは、私たち人間を含む生き物の本質なのかもしれません。

学術的には、動機付け理論の大家のエドワード・L. デシ(Edward L. Deci)が「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の関係性を理論化しています。内発的動機付けには3点の方法を示していますが、その一つが「他者受容感」です。他者受容感とは、周囲の人から「受け入れられている」と感じる気持ちであり、「自分自身がどれだけ他者や社会の役に立つことができるか」という感覚とされています。褒められることによって、他者や社会の役に立てていると感じることができるため、やる気やモチベーションが上がることにつながっているのだと思います。このように、「役に立っている」ということを周囲から告げられたり、褒められたりすることで前向きな気持ちになれるのは、とても素敵なことだと思います。

しかし一方で、最近私は他者から褒める言葉をかけてもらうことだけでなく、自分自身を客観視して「以前よりもできるようになった」、「私なりに頑張った」というようなことを自らが評価して、それ肯定的にとらえ、やる気を上げられるようになるということも、同じように大切なことなのではないかとあらためて考えています。

振り返れば、1996年アトランタ五輪女子マラソンで銅メダル手にした有森裕子さんが、ゴール後のインタビューで「自分で自分を褒めたいと思います」と話していました。当時流行語にもなるほど多くの人の共感を呼んだ言葉でした。最近では「頑張った自分へのご褒美」として、好きなものを買ったり、おいしいものを食べたりといったコマーシャルなどを目にする機会が増えてきているように思いますが、今の社会の「空気」のあらわれではないかと感じているのです。

他者から褒められることはとても嬉しいことであり、ありがたいことでもあります。しかし、それがないと不安になってしまったり、いつでも他者からのほめ言葉を待っているようになってしまっては、ある意味での他者依存の状態になってしまうのではないかと、少々心配になってします。

このブログでもこれまで何度も人材育成の観点から、たとえば上司や先輩社員の役割について触れる中で、「褒める」ことの大切さをお伝えしてきています。それはこれからもますます重要になっていくと思っています。しかし、同時に他者からの誉め言葉は「もらえたらラッキー」というくらいに考え、過度に気にしすぎない、あわせて、自分で積極的に自己を評価し、がんばったときにはきちんと肯定し褒めていくということが、自身を成長させるうえでも、大切なのではないかと考えています。

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