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「遊びたい人が選ぶべき大学ではない。」
昨日(11月7日)の朝日新聞に出ていた、東京理科大学の全面広告のタイトルです。
「ある学科の学生が4年間に書くレポート・論文の枚数は約1,000枚。」さらに、「真に実力を身に付けた学生のみを卒業させる」と続きます。
テレビCM、オープンキャンパスなど様々な媒体を使って、大学は今、熱い「Welcome」メッセージを受験生に送っています。30数年前に大学受験を経験した私からすると、「時代は大きく変わったな」と感じるものの1つです。
当時は今よりも門戸は狭く、「入学させていただいていた」ような時代でしたから、まさに隔世の感があります。
受験生向けの宣伝文句の多くは、「いかに楽しい学生生活を送ることができるのか、留学の機会が豊富か、就職に役立つスキルが身に着く、さらに都心のアクセスが良いキャンパスで4年間学べる」などです。少子化で学生数が減っている中、各大学は耳触りの良い言葉で受験生の心をとらえようと必死になっていると感じます。
そういう中での東京理科大学の冒頭の広告です。
「創立以来変わらない『実力主義』は、現在も、関門科目に合格しなければ進級ができない厳格な制度として受け継がれています。」ともあります。
実際に大学のホームページを見てみると、1つの学部の4年次の留年率は12.6%のようです。他の学校については留年率を確認することができなかったのですが、ここまで書くということは、東京理科大学の留年率は相対的に高いということなのでしょう。
話は変わりますが、最近、別の大学の薬学部の在学生と、やはり別の大学の農学部の在学生と話をする機会がありました。薬学部に通う女子学生は、「幼い時に薬の怖さを経験し、それが薬学部を目指すきっかけになった。実験とレポートに追われる日々だけれど、化学の勉強も好きだし、とても勉強が楽しい。」と語ってくれました。また、農学部の男性は、「食べることは生きること、それを追究したくて農学部を選んだ。実験後に提出するレポートは、考察が甘いと何度もリターンになる。でも、何度も何度も書きなおして、ようやく受け取ってももらえた時の喜びは最高です」と生き生きと話してくれました。
実際のところ、この2人のように大学を選ぶ際に自分のやりたいことは何か、将来どうしたいかをはっきりイメージできている人ばかりではないでしょう。
ですから、都心のキャンパスライフの楽しさや就職の面倒見の良さなどが強調されている広告を見て、ついそれらを優先してしまうのも仕方のないことなのかもしれません。
そうした中で、この2人が明確な目的意識を持ってそれぞれの大学を選び、生き生きと学んでいる姿を見て実に頼もしく感じました。同時にこの2人が選ぶきっかけになったであろう、それぞれの大学のPRはどのようなものだったのだろうとも思いました。
そんなことを考えながら、改めて東京理科大学の広告を見ていて思ったのが、実はこの広告は受験生だけでなく、卒業生を迎える側の企業に対するメッセージでもあるのではないかということです。
「地道に努力を積み重ねた経験が、一生使える力になる。真剣に学びたい学生が集う場所」で学び卒業した学生は、企業にとって魅力的な人材であることは確かでしょう。「真に実力を身に付けた学生のみを卒業させる」というキーワードは、企業側にも強い訴求力を持っているはずです。実際、東京理科大学の卒業生の就職先には、そうそうたる企業名が並んでいます。
どこの大学も、学生に選んでもらえるようにそれぞれの魅力の発信に躍起になっている中だからこそ、大学本来の役割である「学ぶこと」を前面に打ち出したPRは、学生と企業の双方に強く訴求するものがあるのではないでしょうか。
さて、冒頭の質問ですが、もし、あなたがもう一度大学に入るとしたら、どのような大学を選びますか。