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第1,003話 日本という大きなオフィス

2021年03月07日 | 研修

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

少し前(2018年)ですが「オフィスが『オープン』な設計だと、生産性が低下する」という記事がありました※1。一部を紹介します。「学術論文誌『Philosophical Transactions of the Royal Society B』に発表された研究で、物理的な障壁をなくすとコミュニケーションや集合知が生まれにくくなることが示されたという。・・・中略・・・オフィスを従来型のレイアウトからオープンプランに変更したところ、従業員同士の直接のやりとりは時間換算で70パーセント減った一方で、電子メールの量は22〜56パーセント増加した。また生産性も落ち込んでいる。」

日本の企業にとってオフィスがオープン型というのはごく当たり前のことです。それに対して一般的な欧米の企業は個人のスペースがクローズ型になっています(もちろん全てがそうであるわけではなく、概ねどちらが優勢かという話です)。この記事で取り上げられている論文が仮に正しいとすれば、日本は欧米に比べて生産性が低いということになります。・・・冗談じゃない!と言いたいところですが、日本は1970年代からずっと先進国中最下位です。※2

さて、「どうしてオフィスがクローズからオープンになったら生産性が下がった」のでしょうか。

(論文でによれば)今まで社員が個別の仕切りを持つスペースで仕事をしていたのを、仕切りを取り払ってオープン型にレイアウトを変更しました。その結果、「オープンになったことによって監視されているような感覚について不満の声が上がっている。さらに、仕切りのないレイアウトでは従業員の病欠率が高くなる」と述べています。研究対象となったのは(社名は明らかにされていませんが)欧米の会社です。

私はこれを読んで、日本の会社がオフィスのレイアウトをクローズ型に変更して、同じような実験をしたらどうなるだろうと考えました。で、考えてみた結果「多分あまり変わらないのでは」という結論に至りました。

もともと生産性が低いのだからどんな形になってもそれほど変化はないだろうという思いと、働く場がどんな形になってもなんとかやり遂げるのが日本人ではないかという思いが交錯しました。

したがって、日本の会社にとってこの論文はあまり意味がないと言えそうです。

では、テレワークのようにオフィスそのものが物理的に無くなってしまったらどうなるのでしょう。欧米のように「個別の空間」で仕事をすることが一般的な社会では、あまり影響はないかもしれません。一方、日本は物理的な空間を共有することが全くできなくなることによって、生産性は下がってしまう企業が多いかもしれません。事実「テレワークでコミュニケーションが少なくなって生産性が低下した」という話を聞いたことがあります。

もともと生産性が低いうえにこれでは踏んだり蹴ったりです。それでは困るので(悔しいので)、逆に「テレワークになったら生産性が上がった」と言いたいものです。

そのためにひとつの提言をしたいと思います。それは「日本列島がひとつの大きなオープンオフィス」であるという考え方です。オフィスに全員が寄り集まるのではなく、日本中のどこにいても「同じ空間を共有している」という気持ちを全員が持つことです。

北海道から沖縄まで、どの町にいても日本語が通じ、見慣れたコンビニがあり、お互いに顔を合わせようと思えば新幹線や飛行機で気軽に移動できる、しかも「外国」とは海を隔てている。まさにとても便利な「巨大なオフィス」です。

それに比べて、違う言葉を話し、生活習慣が異なり、宗教や考え方が違う人たちが道1本隔てたところに住んでいる欧米のなんと不便なことでしょう。オフィスをクローズ型にするのも止むを得ませんね。

ちょっとひねくれた見方かもしれませんが、テレワークをせざるを得ないときはそれくらい大らかな気持ちで臨んではいかがでしょうか。

※1 https://wired.jp/2018/07/19/open-offices-less-productive/  

※2 https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2019/04/post-69.php

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