「妥協したらプロじゃなくなる」、「日常的に続けていたら、面倒なことも苦痛ではなくなる」、「客先で説明する際に発する『えー』という口癖を徹底的に指摘されたので、その口癖はなくなった」
これらは、弊社が担当させていただいた部下育成研修の中で、「自分の成長に影響を与えたもの」を発表していただいたときに、受講者から発せられた言葉の一部です。
具体的には、現在、管理監督者になっている方々が新人~若手時代だった当時に、上司から直接かけられた言葉や上司の仕事に取り組む姿勢から影響を受けたものとして語ってくれたものです。
現在、管理監督者になっている方々ですから、若手時代からは既に10年以上は経っているのにもかかわらず、当時のことを鮮明に記憶していらっしゃるようです。どういう場面でこれらの言葉をかけられたのかを、まるで昨日のことのように話してくれました。
当たり前のことではありますが、私たちは10年前のことをすべて鮮明におぼえているわけではありません。
しかし、「自分にとって役に立った、救われた」というような言葉については、それを語ってくれたときの上司の表情や姿勢とあわせ、時が経っても色あせることなく、克明に印象に残っているものだと改めて感じました。
そして、そうした指導を受けて管理監督者になった人たちは、現在、とても熱心に部下を育成する人になっていると感じます。
これは、「自分がされて良かった、ためになった」と感じたことについては、立場が変わっても、今度は別の誰かに提供したいと考えるようになるということなのではないでしょうか。
実は、このことはかつて私が修士論文を書く際に行った調査でも、同様の結果が得られていました。調査では、管理職になっている人にインタビューを行いましたが、マネージャー職が過去に受けた影響と、現在部下指導で実践している要因との間には非常に強い相関がありそうだという結果を得ていたのです。
あれから早6年が経過していますが、部下育成研修の講師を担当させていただくたびに、前述のように調査結果と同じ思いを持っています。
さらには研修を通じて、こうしたプラスの影響は多ければ多いほどいいのです。つまり直接の上司に限らず、大勢の人からプラスの影響を受けることができれば、その分だけ自分が上司になった際に、熱心に部下指導を行えるようになるのではないかとも感じています。
このように考えると、タイトルのように部下の育成は今現在の部下のためだけに行われるものではなく、その部下がやがて上司になった際の部下指導にまで影響を及ぼす可能性があるのです。管理監督者の皆さんの責任は結構重大と言えそうです。