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「生命科学の冒険」

 青野由利「生命科学の冒険」(ちくまプリマー新書)を読んだ。裏表紙に「最先端を追う『わくわく感』と同時に『ちょっと待てよ』の倫理問題も投げかける生命科学。日々刻々と進歩する各分野の基礎知識と論点を分かりやすく整理して紹介する」と本書のまとめが書かれているが、まったくその通りのことが「生殖・クローン・遺伝子・脳」の分野に分けて解説されている。
 高校生のとき一番嫌いだった科目は生物だ。数学も嫌いだったが、それは単に問題が解けなかったからで、数学的な思考回路は身に着けたいといつも思っていた。しかし、生物は学問自体が私には面白くなかった。小学生の頃から植物や動物の生態にはなんら興味がもてなかったし、さらに中学に入って生物の先生が70歳をゆうに超えたご老人で、何を言っているのかさっぱり理解できず、クラス中でワイワイ騒いでいたのが生物嫌いを助長させたのかもしれない。文系なのに大学入試では物理と化学を受験科目に選択したくらいだから、本気で生物が嫌いだった。それなのにどうしてこんな本を読もうかと思ったかと言えば、著者の青野由利という人物が毎日新聞の論説委員として、時々コラムに記事を書いているのを読んだことがあったからである。その記事がなかなか面白くて彼女の名前を記憶していたから、夏休み前に書店でその著書を見つけたときには思わず手にとってしまった。パラパラと頁をめくるうちに、これを一冊読んで今度娘に会った時に論戦を挑んでみるのも面白いかな、と余計なことを考えて買ってしまった・・。
 娘が大学院でどういう研究をしているのかまったく知らないが、農学部であり、マウスの解剖も頻繁にやっているという話は聞いているので、生命科学に少しくらいは関係があるのではないかと思う。専門が多少違っていても、妙に知識が豊富な奴だから、私が知ったかぶりしてあれこれ言ってみるのも一興かもしれない、などとどうせ返り討ちになるのが落ちなのに、本書で少しばかり勉強してみようと思い立った。
 だが、読み始めてみてとても短期間では読み終えられないことがすぐに分かった。内容が難しいこともあるが、私の知識が乏しすぎて、読むのがしんどくなってなかなか進まないからだ。娘に対抗しようという意地だけではとても乗り越えられない壁が本書の中にはそびえていた・・。なので、当然のことながら8月のお盆に京都で娘に会った時には半分も読み終えてなかったから、本書に関することは何も言えなかった。中途半端な状態で話したところで、バカにされるだけだろうから・・。
 だが、とにかく読み終えたいという気は夏休みが終わっても変わらずに持っていたので、何とか心を奮い立たせて先日やっと読み終えることができた。やっとの思いで読み終えた記念に、いざここに感想を記そうと思っても、如何せん内容が余り理解できていない。何をどう書いたらいいのかまったく覚束ない。ただ雑感のようなものがいくつか浮かんでくるだけなので、それを覚え書きとして少しばかり書き留めることにしようと思う。
 
 ・生命科学がこのまま進歩していくと、神の領域に人間が踏み込むことになるのだが、果たしてそんなことをしてもいいものだろうか・・。
 ・神はすべてを見通す力を持った存在なのだろうが、そんな力を持たない人間が、神の真似事をしてしまうのは危険ではないだろうか。
 ・そうした恐れから、生命科学は常に倫理問題を伴うのだろうが、完全に倫理的・道徳的な人間などいないだろうから、誰もが認める判断基準を設ける必要があるだろう。
 ・しかし、基準が正しいものであるかどうかを総合的に判断することなどとてもできない相談だから、その基準自体も恣意的なものになる危険がある。
 ・しかもこれからは生命科学によって金儲けをしようとする動きが一段と加速するだろうから、様々な方面の利益が絡み合って、純粋に人間の幸福のための研究ではなくなってしまうのではないだろうか・・。

 などなど、昔開くのさえいやだった生物の教科書よりも何倍も面白い本書を読んでさえ、こんなまとまりのないことしか思い浮かばないのだから、自分の能力を超えたことにまで口を挟むのは、どだい無理があるようだ、残念ながら・・。
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