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破綻

 先週はアメリカ金融市場の大混乱が大きく報道され、アメリカ経済の動向が日本経済にも深く影響を及ぼすことを改めて痛感した。リーマンブラザーズなる証券会社の経営が破綻したことには、「奢れる者久しからず」という「平家物語」の一節を思い出すだけで、結局は実体のないマネーゲームに狂奔した者たちの哀れな末路にも快哉を叫びこそすれ、一片の同情さえ浮かんではこない。だが、リーマンの破綻が明らかになった日に原油先物取引市場で1バレル=90ドルにまで暴落したのには笑ってしまった。アメリカ経済の失速により、石油の消費量が減少するとの見方から価格が下がったとのもっともらしい解説がついていたが、私には原油バブルを主導してきた金融投資家の没落の象徴であるように思えてならない。徒に一般庶民の生活に打撃を与えてきた報いを受けるときが来たのだ!!と因果応報の摂理に僅かながらも溜飲の下がる思いがした。(しかし、小売価格には一向に反映されない。以前これくらいの市場価格であった頃の小売価格は110円くらいだったと妻がどこかで調べたことを教えてくれた。この期に及んで儲けようと画策している輩がいるんだろうな、きっと・・)
 リーマンの破綻など、投資などとは無縁の生活を送っている私には直接的な影響はまるでない。しかし、これだけ経済がグローバル化した現在、そんなことで済むはずがないと思っていたら、翌日になって、経営の行き詰ったアメリカの大手保険グループAIGに対してアメリカ政府が大量の公的資金をつぎ込むとの報道が流れた。リーマンと違い、余りに巨大すぎて潰したりしたら経済システムそのものに測りしれない打撃を与えるため、潰すわけにはいかずに救済措置を講じねばならなかった、との解説を見聞きしたが、不良債権を抱えた大手銀行に公的資金を投入した何年か前の日本の再現のようで、対岸の火事がいつ何時どこに飛び火するのか分からない時代なんだと少々恐ろしくなった。特に今回のAIGに関しては、私の加入している生命保険がアリコであるためにその思いは強い。
 数年前に私にかけてあった生命保険が満期を迎え、新たな保険をかけねばならなくなった時、どうしたらいいのか保険代理店を営んでいる友人に相談した。子供も大きくなって、以前ほど死亡保障額を高額にする必要もなくなったため、掛け捨てでもいいから安い保険を、という私たちの希望を聞いた友人が「それなら、アリコにしたら」と勧めてくれた。そのアドバイスに従って現在に至ったが、その間に入院したこともなく、死んだりもしなかったので、ただただ掛け金を払い続けてきただけだが、別にこれといって不満は感じたことはなかった。だが、今年に入って妻が「アリコが危ないって噂だよ」とたびたび言うようになり、夏休み前には「サブプライム関連で本当にピンチらしいから、保険変えようよ」と訴えるようになったので、さすがに心配になって友人に電話をしてみた。
 「危ないって話は聞いてないけど・・」
と彼は言ったが、妻がどうしても変わりたいと言い張ったので、保険料の年払いが終わる秋までに別会社の新しい保険契約を結ぼうということになった。夏休み明けに友人が確認にやって来る約束になっていたが、まだ顔を見せない。きっと多くの人からアリコに関する問い合わせがあって、その対応に追われているのだろう。最近は「代理店は保険会社からの締め付けが厳しくて、仕事も楽じゃない」と会うたびにこぼす彼であるが、仕事に関しては至極まじめな男であるから、近いうちに話に来てくれるだろうと思っている。
 石油価格の高騰で消費者からの不平不満の矢面に立っているのがスタンドの従業員であるのと同じように、保険会社の放漫な経営のあおりを食らって保険加入者からの突き上げを食らうのは、加入者に直接対応する代理店の人たちである。末端ばかりが苦しんで、本体の人たちはのほほんと自分たちの懐だけ暖めているように思えてくる。責任ある立場のものが責任を負わずに、本来手足でしかない者たちに大きな責任がかかってしまうような仕組みはどう考えてもおかしい。「トカゲの尻尾切り」といういやな言葉を思い出してしまった・・。
 
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