じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

よしもとばなな「あったかくなんかない」

2021-08-30 20:08:02 | Weblog
★ 「明かりは見え始めています」と、政治家が宗教家のような発言をする昨今。私事ながら、コロナワクチンの予約がやっととれて少し明かりが見えてきた。

★ さて、明かりということで、今日は「きみが見つける物語 友情編」(角川文庫)から、よしもとばななさんの「あったかくなんかない」(「デッドエンドの思い出」にも所収)を読んだ。

★ エッセイ風の書き出し。主人公が幼かった頃、近所に住んでいた老舗和菓子屋の男の子との初恋物語のようだ。父母(それも離婚まじかと思えるほど険悪なムード)との3人家族の主人公にとって、大家族の和菓子屋はあこがれだった。しかし、表向きのにぎやかさの裏ではドロドロとした人間模様があったようで。

★ 「初恋」の男の子。彼には天使のような透明感が漂い、その瞳は聡明な輝きを発していた。中盤まで穏やかに話が進む。しかし、だんだん暗雲が暗示され、そして遂に・・・。

★ 主人公と男の子が「明かり」について論争するシーンが印象的だ。明かり自体があったかいんじゃなくて、そこに住む人から、その人たちの中にある明るさが明かりのあたたかさの本質だという。うーん、幼い子とは思えない。哲学的だ。川の流れの隠喩にも引き込まれる。

★ この世のあらゆるものは、川の流れのように移ろいゆく。「方丈記」のような心境になった。

 
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