かねうりきちじの横浜・喫茶店めぐり

珈琲歴四十年の中の人が、珈琲豆荷揚げ量日本一を誇る横浜港のある町の喫茶店でタンザニア産コーヒーを飲み歩きます

低迷した日本経済に必要な処方箋は何か?②~小野善康著『資本主義の方程式』

2022年03月23日 | 旧ブログ記事(その他)
前回紹介した記事のとおり、1990年代初頭にバブル経済がはじけてから30年間で、家計の金融資産は2倍に増えましたが、日本経済は低迷し続けてきました。

いわゆる失われた30年間です。この間、日本政府はあの手この手の経済対策をしてきましたが、結局効果が出ていません。賃金の伸びがこの30年で4%ということから、はっきりしていることです。

ではなぜ、経済対策が実を結ばなかったのでしょうか?

筆者である小野善康さんは、バブル崩壊前後で経済の質が変化したのに、経済対策は旧態依然だったからだと指摘しています。

バブル以前は、国民の消費意欲に生産能力が追いついていない成長経済の状態だったので、生産能力を伸ばせば消費が伸びていました。

しかし、バブル崩壊後は、逆に国民の消費意欲が減退して生産能力が余剰になってしまった成熟経済へと移行したと言います。

成熟経済では、人びとはモノを買うためにカネを貯め込めるのではなく、『カネの保有そのものに魅力を感じる」資産選好という状況に陥いるといいます。

つまり、カネは増えるけれども消費が伸びない、消費が伸びないのでモノが売れない、モノが売れないので経済が成長していかないというわけです。

本書を要約すれば以上なのですが、これをひとつの方程式を使って、事細かく説明してくれています。

そして、次のように指摘します。

 「 結局、旧ケインズ経済学やMMT理論の論者が勧める赤字財政の拡大も、
  黒田日銀総裁が主張する異次元金融緩和の継続も、カネという虚構の
  幸せを人々に提供するという効果はあっても、本来の目的である実体
  経済の回復という効果はない。しかし、実体経済への効果がないのは
  赤字財政や金融緩和がまだたりないからだという理由で是を続け、
  膨大な量の国債と貨幣を積み上げれば、最終的に国債も貨幣も信用を
  失って、モノへの需要とは無関係に貨幣価値が崩壊するハイパー
  インフレを引き起こす危険がある。それが起これば、人々は、価値が
  急速に下がり続けるカネを早くモノに交換しようと志弖市場に殺到する
  から、一時的にはモノへの需要が爆発的に増えるが、経済はすぐに
  大混乱に陥って経済取引も満足にできなくなる。一度こうなったら、
  貨幣や国債の信用を取りもどしてもとの状態を回復するのは、
  ほとんど不可能である。」(pp.95-96)

そうならないために最終章で政策提言を行っています。かいつまんで言えば、環境対策など新たな需要を作ること、余った生産能力を政府が活用することですが、詳しくはかねうりきちじが説明するよりも、ぜひ本書を手に取ってい確認してただきたいです。

≪目次≫
  はじめに                   ⅰ
第1章 資本主義経済の変遷          3
第2章 「モノの経済」から「カネの経済」へ   23
 1 基本方程式            24
 2 成長経済の経済学         36
 3 成長経済から成熟経済へ      53
 4 資産選好とバブル         59
第3章 成熟経済の構造           69
 1 成熟経済の基本方程式       70
 2 資産選好と財政金融政策      82
 3 経済活動を決めるもの       101
 4 その他の経済刺激策        109
 5 経済ショックと危機対応      123
第4章 格差拡大              139
第5章 国際競争と円高不況         151
 1 国際経済での不況         152
 2 海外経済の影響          174
第6章 政策提言              185  
 1 成長経済             186
 2 成熟経済             190
 3 格差拡大と再分配         199
  おわりに                   205
  主要参考文献                 212

総頁数217ページ
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 低迷した日本経済に必要な処... | トップ | 給料を上げるために必要なこ... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

旧ブログ記事(その他)」カテゴリの最新記事