自分の周りの空を写します
北東気流の街に生まれて
28年ぶりの通院
僕は28年前にその医師の指示でこの病院に入院した。
そしてその時にブルース・スプリングスティーンの初来日コンサートがあり、
僕はチケットをやっと手に入れたのに観に行かれなかった。
その因縁の病院で因縁の医師に会いに行った。
その医師は当時は医局の一医師だったが、
今は教授になっている。
年月は経ったものだ。
僕は講演会の講堂に入場開始時間に入り、
演壇の位置から、先生はこの通路を通ると予想して、
前から3列目、通路側の席に座って先生が来るのを待った。
先生が来たら、当時と全く変わっていないのにあきれてしまった。
自慢の口髭も生やしたままだった。口髭は当時よりもボリュームが少なかったが。
他の講演者の話の後の休憩時間に先生が通路を通る時に僕は先生に話しかけた。
気さくに話を聞いてくれたのだが、
僕を覚えていないのは仕方ないとしても、
先生に紹介してもらった病院の事も覚えていなかった。
僕が紹介してもらい今も通っている病院を忘れていた。
でも僕もここで終われないと思い、
入院していて、どうしても観たかったコンサートに行けなかったのですが、
10年後にアメリカに行って観てきました。
アメリカに3回行きましたと話したら、
「すばらしい」
と目を輝かせて言ってくれたと僕は思った。
そして僕も書いている病院の文集を渡したら
「ぜひ読ませていただきます」とうれしそうに言ってくれた。
講演の内容は難しくてよくわからなかったが、
僕の目的は達成した。
たとえ大学教授でも生身の人間。
ちゃんと話を聞いてもらえるのだ。
そして僕は今回は一生に一度だけの貴重な機会だと悲壮感を抱えて会場へ行ったが、
その先生は僕のことは忘れてる、病院も思い出せなかった。
意外な展開になったが、逆に、そんなもんなんだ。
過去の小さなわだかまりよりも今、何をしているかが大切なのだと教えてもらった気がする。
講演終了後も先生に話しかけた。
先生は文集の事と僕が通っているデイケアの事を興味深く聞いてくれた。
何かおおげさだけど30年近くのわだかまり、呪縛から解けたような気持ちがして楽になった。
人生はこれだからおもしろいなと思った。
これが僕の生き方なんだ。
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