落葉松亭日記

ニュース・評論スクラップ、凡夫の日々雑感、山歩記など

中共の対日外交の変化

2006年03月31日 | 政治・外交
 何かに付け「靖国」を持ち出して外交カードにしてきた中共が最近変化してきているという。
 このことについて、「正論3月号」で評論家石平氏の評論「前原発言の衝撃と中国政府の靖国外交の破綻」が解りやすかった。
 今、ライブドア・メール事件で民主党は混乱しているが、この頃の前原代表は中共に対して大きなインパクトを与えていたことになる。
 以下評論より抜粋
前原代表の発言
2005年12月8日
 ワシントンで「中国の軍事力増強は現実的脅威」。日中国交回復以来、日本の党首クラスの政治家が公的にこのような趣旨の発言はおそらくはじめてだろう。
2005年12月11日
 北京で唐家セン前外相との会談で「何を目的としているのか。現実の脅威と見なされても仕方がない状況だ」
12日
 北京外交学院での講演で「空軍力、海軍力、そしてミサイル能力を中心として(中国軍の)能力が飛躍的に向上していることに、私は率直に脅威を感じている」
13日 中国訪問最終日 記者会見
 「自分たちに都合の悪い事を言う国会議員に会わないという姿勢なら、仮に靖国の問題が解決したとしても、日中間の問題は永遠に解決されない」

中国の反応
2005年12月13日
 中国外務省秦剛幅報道局長のコメント「中国は永遠に平和を擁護する。中国の一体どこが脅威なのか」「日本の政治家は日中友好関係に役立つ言動をすべきだ」
2005年12月20日
 中国政府の対外広報担当「中国は平和発展の道を堅持するとの意見を、よりいっそう強烈な声で世界に向かって発信しなければならない」
2005年12月22日
 今の中国はもっとも警戒しているのは周辺国における「中国脅威論」である。そのため胡錦涛政権は「中国平和発展の道」という初の白書を発表する。つまり中国脅威論の打ち消しに躍起になっている。

一方、靖国問題に関しての前原代表の見解は以下のようなものだ。
A級戦犯が合祀されている靖国へは日本の首相・外相・官房長官が参拝すべきでない」「A級戦犯が合祀されている限り自分も参拝に行かない」。これは中共の主張とぴったりしており、前原代表と中国政府との間に「ハードル」はない。

ところが、12月11日から中国に訪問中に要望していた胡錦涛主席には会えず、12月13日会談で最後に出てきた人物は中国外務省の1外務次官にすぎなかった。冷遇より最低限の外交儀礼すら無視するような態度であった。

その理由は言うまでもなく、前原代表の「中国脅威論」が中国指導部の逆鱗に触れ、もはや対話の相手として取り扱われなかったことを意味する。

このことは逆に、「靖国問題」は決して日中間の最大の「争点」でもなければ、日中関係を「阻害」する唯一の原因ではないことを何よりも証明している。
従来、「靖国問題さえ解決すれば日中関係が改善できる」と言ってきたことが、全くのウソだと分かった。

前原「中国脅威」発言の副産物

このとき、クアラルンプールでASEAN+3(日中韓)サミットが開かれており、「靖国参拝問題」を焦点に日中間の攻防が激しく展開していた。要するに、小泉首相のアキレス腱である「靖国参拝問題」を国際問題かすることによって、かつて日本からの侵略を受けたという共通体験を持つ東南アジア諸国から一定の理解と支持を得られた上で、日本を最大限に孤立化させようというする戦術であろう。
しかし、このような企みは小泉首相からの激しい反撃に遭遇した。
2005年12月13日
 小泉首相「戦争を美化するのではなく、二度と戦争を起こさないことを誓うもので、戦没者に哀悼の誠を示すものだ」「(靖国参拝という)一つの問題で中国は会わないと言っているが、(これを理由に)首脳会談ができないのは理解できない」と述べ、激しく中国を批判した。
14日
 サミット会議後、記者会見で小泉首相はさらに、自らの靖国参拝に中国が反発していることについて「一人の国民である内閣総理大臣が自分の国の一施設に、平和の祈りと哀悼の念を表すこと、これを批判する気持ちが分からない」と改めて中国の姿勢を批判した。

共有する一つの会議場で日中両国の首脳が正面衝突したのは、おそらく今回が初めてではないかと思う。
しかし、その後の中国政府の対応に注目すべき重要な変化が起きた。

現地に居合わせたはずの中国首相としての温家宝からは、再反論や反撃の声がいっさい上がらなかった。
会議前半に見られたような日本集中攻撃の凄まじい勢いはなく、13日以降の外務省報道官の反応の仕方の低調さと温首相自身の沈黙は尋常であるとはいえない。

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 前述の前原代表の「中国脅威」発言、特に13日の「仮に靖国の問題が解決したとしても、日中間の問題は永遠に解決されない」という記者会見での批判が、小泉首相の「(靖国参拝という)一つの問題で中国は会わないと言っているが、(これを理由に)首脳会談ができないのは理解できない」という発言にたいする援護射撃となったはずである。

 中国政府のとってきた「靖国参拝問題」一点張りの硬直した対日外交方針は破綻した。

現在、中共の「親日世論形成」工作に乗るようにして日中友好7団体が訪中している。
どんな講話を聞かされ帰国するのだろうか。