【経営コンサルタントのお勧め図書】 世界と日本経済大予測2023-24 2302
経営コンサルタントがどのような本を、どのように読んでいるのかを教えてください」「経営コンサルタントのお勧めの本は?」という声をしばしばお聞きします。
日本経営士協会の経営士・コンサルタントの先生方が読んでいる書籍を、毎月第4火曜日にご紹介します。
【経営コンサルタントの本棚】は、2012年に、経営コンサルタントがどのような書籍を読んでいるのか知りたいという、ブログ読者の声を反映して企画いたしました。
幸い、日本で最初に創設された経営コンサルタント団体である日本経営士協会には優秀な経営士・コンサルタントがいらっしゃるので、その中のお一人である酒井闊先生にお声をかけましたところ、ご協力いただけることになりました。
それが、今日まで継続されていますので、10年余もの長きにわたって、皆様にお届けできていることに誇りを持っています。
■ 今日のおすすめ
『「世界と日本経済大予測2023-24」Economic risk to business and investment』
(渡邉哲也著 PHP研究所)
■ 地政学的視点から見る50の国内、国外のリスク(はじめに)
著者は、YouTube“文化人放送局”の「渡邉哲也show」等で活躍する、ネット時代の経済評論家です。
ところで、電通の調査レポート「2021年の広告費」(2022.2.24発表)によれば、インターネット広告費が39.8%とマスコミ四媒体の広告費(テレビ・新聞・ラジオ・雑誌)36.1%を上回りました。まさに、本格的ネット時代が到来しています
紹介本は2022-23年に予測される50のリスクについて短く論評しています。著者の経済大予測シリーズは2020年、2021年、2022年に続く4作目です。2020年予測本以来「高い的中率」で話題になっています。
紹介本の2023年本で著者は、読者に向けて、「インターナショナリズム(お互いの国の国柄・文化などを理解・許容を通じて進化する国際社会)」と「グローバリズム(国柄・文化などの理解・許容を超えた一つのルールで世界が動く体制)」の違いを明確に理解して読み解いて欲しいと訴えると同時に、グローバリズムの失敗と終焉を強調しています。大切な視点として受け止めたいです。
それでは、2023-24年に予測される50のリスクの中から注目したリスクを次項でご紹介します。
■ 注目のリスクを見てみよう
【ロシアVSウクライナ-飛び地「カリーニングラード」とバルト海に注目-】
リトアニアとポーランドに囲まれたロシア領カリ-ニングラードへのロシアからの物資は、EUのロシアへの経済制裁以前は、2004年のリトアニアのEU加盟当時にロシアとの間で締結された、輸出入の手続きを取らずにロシアから鉄道やトラックで運ぶことができる、協定に基づきリトアニア経由の鉄道・道路運送で運ばれていました。
しかし、リトアニアはEUのロシアへの経済制裁を遵守し、貨物列車輸送、道路輸送いずれも禁止しました。これに対しロシアは『2004年の協定を破るなら「軍事紛争に発展しうる」』と反発し、禁止は道路運送のみとなっています。
この様に、EU(リトアニア)は、譲歩したように見えますが、今後のロシアの侵略次第では再び通過を禁じる「キラーカード」を手元に残しています。
カリ-ニングラード(ドイツ領時代のケーニヒスベルク;哲学者カントの生誕地)にはロシアのバルト艦隊の本拠地があり、核兵器搭載可能なイスカンデルも配備されています。EUの喉元に突き付けられている軍事拠点です。
ロシアの弱体化(欧米メジャーの撤退によるロシアのエネルギー産業は、原油・天然ガス鉱区の探鉱・開発・生産・輸送などにおいて、様々な支障がこれから表出)による『カリ-ニングラードから「ロシア軍撤退」』の可能性、2023年のフィンランド・スウェーデン2か国のNATO正式加盟により『バルト海に面した国がロシアを除き全てNATO加盟国になることでの監視強化と行動制限による「バルト艦隊の弱体化」』の実現、等の地政学上の変化に注目です。
【中国の半導体不足-「世界の工場」の座が危ない-】
2,022年10月米国が「半導体技術の対中禁輸」を発表した。米国で製造された半導体や製造装置だけでなく、米国の技術を使って第三国で製造された半導体や製造装置も規制の対象となった。
半導体関連で、米国技術を含まない製品は皆無です。中国において半導体を作るための設備・技術に加え半導体そのものが規制の対象になる可能性があり、中国にとっては死活問題です。さらに言えば、先端コンピューティング関連の半導体製品・サービスの米国の在中国子会社向けの輸出に関する一時的許可の終わる2023年4月以降は、在中外国メーカーですら組み立てなどが出来なくなる可能性があります。
米国は、半導体以外の先端分野の対中規制を強めていく可能性があり、日本を含む外国企業の中国における生産が難しくなることが考えられます。
【ルソン島にスービック基地復活-フィリピンの英断で中国包囲網が完成する-】
フィリピン北部のスマトラ島のスービック湾の海軍基地が米国から返還されて2022年11月24日で30年になりました。
ここで米比二国間の軍事協定の歴史を見てみましょう。
1951年8月、アメリカ合衆国とフィリピンの間で「米比相互防衛条約」が締結された。(同年9月には、サンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約、53年の米韓相互防衛条約、54年の米華相互防衛条約〈台湾の蒋介石政権間との条約〉が締結されている。)
一方米軍基地に関しては、1947年の「米比基地協定」がある。この基地協定に関しては、何回かの協定の改定を経て、1991年が使用期限とされていた。加えて1987年の比国憲法の改正により、延長は議会上院の承認が必要とされた。
米比基地協定の失効期限となる1991年に、米空軍のクラーク基地や米海軍のスービック基地の近くにあるピナツボ山が大噴火し、クラーク基地が火山灰や泥流により大きな被害を受けた。そのような状況の中、米比両政府は、スービック基地の使用を10年間延長する内容を含む「米比友好協力安全保障条約」を締結し、憲法の規定に基づき上院の批准を求めたが、上院は拒否をした。 これにより、米軍は基地使用の根拠を失うこととなり、翌1992年にはフィリピンから完全撤退することになった。
米軍撤退後の1995年に、中国による南沙諸島のミスチーフ礁の占拠など国際情勢の変化もあり(2016年7月、国際司法裁判所が比国の主権を認定)、米比両国は1998年に「訪問軍地位協定」を締結し、関係の再構築を行った。加えて、2014年には事実上の基地使用協定となる「米比防衛協力強化協定」を締結し、現在、 米軍は5つのフィリピン軍基地を使用している。
2022年11月、米ハリス副大統領が、2022年6月に大統領に就任したマルコスと会談し、比国における米軍基地の増強で合意。マービック海軍基地の早期再開が見込まれる。
これにより、フィリピンのマービック⇔台湾⇔日本の沖縄⇔日本本島の対中前線が出来ることになります。今後の、日本の対比関係にも注目です。
2023年1月4日マルコス大統領が訪中しましたが、内容は「交渉継続」表明に止まっており、前任の親中・ドゥテルテ大統領とは異なり、米国との良好な関係は維持されると思料します(筆者所見)
(追記)2023年2月2日、米国とフィリピン両政府は(オースティン米国防長官とフィリピンのガルベス国防相が会談)米軍がフィリピンで使える拠点を4カ所増やし計9カ所にすると発表した。台湾に近いフィリピン北部(マーベリック)などが候補とされる。(2023.2.2日経電子版)
■ 予測されるリスクをチャンスに(むすび)
紹介本の予測する50のリスクを参考に、ビジネス・チャンスを掴みましょう。
【酒井 闊プロフィール】
10年以上に亘り企業経営者(メガバンク関係会社社長、一部上場企業CFO)としての経験を積む。その後経営コンサルタントとして独立。
企業経営者として培った叡智と豊富な人脈ならびに日本経営士協会の豊かな人脈を資産として、『私だけが出来るコンサルティング』をモットーに、企業経営の革新・強化を得意分野として活躍中。
http://www.jmca.or.jp/meibo/pd/2091.htm
【 注 】 著者からの原稿をそのまま掲載しています。読者の皆様のご判断で、自己責任で行動してください。
■■ 経営コンサルタントへの道 ←クリック
経営コンサルタントを目指す人の多くが見るというサイトです。経営コンサルタント歴45年余の経験から、経営コンサルタントのプロにも役に立つ情報を提供しています。