藤(フジ科マメ科属)花言葉は、恋によう;懐かしい想い出。野田藤系と山藤系二大別される。ともに山野に自生する蔓性落葉低木で、他の樹木や岩などに巻きついて高く這い上る。4;5月頃房をなして咲く紫色の蝶形の優美なことから、鉢植えにしたり、古くより栽培観賞されてきた。野田藤はかつて大阪の野田に銘木があつたことからこうよばれている。蔓は右巻き、花は花穂の付け根からせんたんにむかって咲き下がる。和0㎝から1mを超す長さまで花穂を伸ばし風に揺れるさまは、藤房といわれるように美しい。山藤が左巻き。花穂は10~20㎝と短いが、全体がほぼ同時に咲き揃うのでこちらも美しい。葉は両者ともに奇数羽状複葉で、互生し、秋には黄葉する。白花のものは山藤の変種だが園芸品種として多様なものが作りだされてもいる。秋には黄ふじ葉する。木部は特に藤蔓とよばれて、強いしなやかであることから物をしばったり手工芸に用い足り、繊維として使用されることもある。「くたびれて宿借るころや藤の花 芭 蕉」「水影やむさびわたる藤の棚 其 角」「蓑虫のさがりはじめつ藤の花 去 來」「藤の花さすや茶摘の荷ひ籠 許 六」「しなへよく畳へ置くや藤の花 太 祇」「月に遠くおぼゆる藤の色香かな 蕪 村」「藤の雲の梯かかるなり 蕪 村」「しら藤や奈良は久しき宮造り 召 波」「門に待つ駕の欠伸や藤の花 麦 水」「筏くむ夕暮藤の落花かな 白 雄」「藤棚の隅から見ゆるお江戸かな 一 茶」「藤の花長うして雨ふらんとす 正岡子規」「藤垂れて今宵の船も波なけん 高浜虚子」「山藤の風すこし吹く盛りかな 飯田蛇忽」「藤浪に雨かぜの夜の匂ひけり 前田普羅」「雨の藤花こまやかに相寄れる 長谷川春草」「藤の花軒ばの苔の老いにけり 芥川龍之介」「寧楽山は藤咲けるなりくもれども 水原秋櫻子」「大河に逆浪たちて藤咲けり 山口誓子」「藤垂れてわが誕生日むらさきに 山口青邨」「雨誘ふ藤の落花の美しく 高尾年尾」「藤揺れて朝な夕なの切通し 中村汀女」「藤つゝじさかりを過ぎしとはいへど 星野立子」「白藤や揺りやみしかばうすみどり 芝 不器男」「梢の子躍リ満樹の藤揺るゝ 中村草田男」「花乏し藤の紫柔毛かかれたつ 石橋秀野」「藤浪の怒涛のごとく懸れるも 田畑美穂女」「藤の昼膝やわらくひとに逢ふ 桂 信子」「天心にゆらぎのぼりの藤の花 沢木欣一」「さわがしき地にたれさがり藤の花 鈴木六林男」「白藤には白きひかりの夕日射 飯田竜太」「こころにもゆふべのありぬ藤の花 森 澄雄」「藤の花少年疾走してけぶる 和田捂朗」「藤の雨墓に向かひてあたたかし 吉田鴻司」「藤波を回りて虹の越訛 角川照子」「曇天の熱する日なり藤の花 広瀬直人」「藤房の揺れる長さの違ふ風 稲畑汀子」「藤老いてむらさきなるは苦しかな 遠山陽子」「連休の中の平日藤の花 星野恒彦」「そこだけが紫けむり懸り藤 高濱朋子」「山藤が山藤を吐きつづけおり 五島高資」「眠らんと閉つる鏡や藤の花 山西雅子」「白藤は水田のひかり得て咲けり 水田光雄」「限りなく仏女身や藤の花 川嶋桃子」。(立ち去ればまだ日は高し藤の花 ケイスケ)。