わたしがプロ野球の試合を見たのはいつだったか・・・思い出そうとしても頭に浮かんでこないほど昔になった気がする。
我が父は野球ファンだった。特に高校野球を見るのが大好きで、試合が始まる時期になると、居間のテレビは父専用と化した。母は見たいテレビがあると、別の部屋の小さいテレビで見ることにしたという。いつもは母中心のテレビ番組だけど、プロ野球中継と甲子園中継があるときだけは父のために遠慮したのだ。
最初は一緒に見ていなかったけど、母も一緒に見るようになった甲子園。二人の応援は真逆で、父が静かに見ているのに対して、母はここぞとばかりに声を上げる。
「父さんは静かに応援していたけど、やっぱり声を出して応援するほうが応援のしがいがあったよ」と母が後でわたしに教えてくれた。
そう言って、かつての二人の様子を思い浮かべたであろう母。
父が亡くなった年の夏。
母と二人で高校野球を見た。
「父さんの代わりに応援しよう」
テレビを見つめる母の脇で微笑んでいる父が座っているような気がした。
母は暑い夏でも体に風を受けると後で体に痛みが出るからと極力風を受けないようにしている。でも父は違う。痩せた体に暑さが沁みるのだろう。わたしが団扇で仰いであげると気持ち良さそうな顔をした。
「あぁ、いいなあ」
父は嬉しそうに言う。父のいいところは感謝の言葉をいつも誰にでも言うところだ。「ありがとう」という言葉をいくつ聞いたかわからない。母の隣の誰もいないそこに団扇で風を送ってあげた。「ありがとう」ともう一度言ってもらいたかったな、あのとき。
父の代わりにテレビの前に座り野球応援していると、父の声が聞こえた。
「やっぱり野球は高校野球が一番いいなあ」
球児の一生懸命さが好きなのだという。うんうん、分かる気がする。
何かにひたむきな姿、それを画面の向こうに感じ取っている時間だ。
今年もまた父の大好きな高校野球が始まった。今年は何試合見ることが出来るだろう。
今日は無理だけどね。母の診察がある。しかも二つも受診だ。あっ、病院のテレビ、高校野球入れているかもしれないね♪
我が父は野球ファンだった。特に高校野球を見るのが大好きで、試合が始まる時期になると、居間のテレビは父専用と化した。母は見たいテレビがあると、別の部屋の小さいテレビで見ることにしたという。いつもは母中心のテレビ番組だけど、プロ野球中継と甲子園中継があるときだけは父のために遠慮したのだ。
最初は一緒に見ていなかったけど、母も一緒に見るようになった甲子園。二人の応援は真逆で、父が静かに見ているのに対して、母はここぞとばかりに声を上げる。
「父さんは静かに応援していたけど、やっぱり声を出して応援するほうが応援のしがいがあったよ」と母が後でわたしに教えてくれた。
そう言って、かつての二人の様子を思い浮かべたであろう母。
父が亡くなった年の夏。
母と二人で高校野球を見た。
「父さんの代わりに応援しよう」
テレビを見つめる母の脇で微笑んでいる父が座っているような気がした。
母は暑い夏でも体に風を受けると後で体に痛みが出るからと極力風を受けないようにしている。でも父は違う。痩せた体に暑さが沁みるのだろう。わたしが団扇で仰いであげると気持ち良さそうな顔をした。
「あぁ、いいなあ」
父は嬉しそうに言う。父のいいところは感謝の言葉をいつも誰にでも言うところだ。「ありがとう」という言葉をいくつ聞いたかわからない。母の隣の誰もいないそこに団扇で風を送ってあげた。「ありがとう」ともう一度言ってもらいたかったな、あのとき。
父の代わりにテレビの前に座り野球応援していると、父の声が聞こえた。
「やっぱり野球は高校野球が一番いいなあ」
球児の一生懸命さが好きなのだという。うんうん、分かる気がする。
何かにひたむきな姿、それを画面の向こうに感じ取っている時間だ。
今年もまた父の大好きな高校野球が始まった。今年は何試合見ることが出来るだろう。
今日は無理だけどね。母の診察がある。しかも二つも受診だ。あっ、病院のテレビ、高校野球入れているかもしれないね♪