【♪お燈まつりは男の祭り、山は火の海下り龍】
新宮節にこう歌われる勇壮な火祭り「お燈まつり」が今年も2月6日夜、和歌山県新宮市の神倉神社で繰り広げられる。熊野地方に春を呼ぶといわれるこの祭りの主役は白装束に身を固めた「上がり子」約2000人だ。松明にご神火をいただくと、急峻な石段538段を我先に一気に駆け下りていく。
神倉神社は熊野三山の一つ、熊野速玉大社の摂社。高さ約100メートルの絶壁の上に鎮座し、巨大な「ゴトビキ岩」をご神体としている。源頼朝寄進という石段を下っていくと、最初は緩やかだが、中ほどからは目もくらむほどの急坂が続く。毎年祭りが近づくと補修するものの、古いだけにかなり凸凹も多い。この石段を暗闇の中、松明の明かりを頼りに猛スピードで駆け下りるのだから命懸けだろう。
【女人禁制。かつて男装し参加した女性も!】
だが、そのスリルと炎の熱さ・煙たさを一度味わったらやめられないそうだ。白装束と松明・わらじ・白足袋・荒縄(しめなわ)などを市内の取扱店で調達さえすれば、誰でも参加できる。だから市民以外にも遠方からやって来て、毎年参加する人たちも結構多い。ただ、この祭りは女人禁制のため、参加できるのはあくまでも男性だけ。男なら小さい子どもでもOK。「子どもはみんなで守る」が上がり子たちの暗黙のルールだ。
ところが、かつて男装して参加した女性がいた。これには神社関係者も「神への冒涜(ぼうとく)」と今も怒りを隠さない。当日はふもとの太鼓橋が「結界」となり、ここで入山者を厳しくチェックし、見物人はそこから中に入ることができない。このため女性の中には祭り前日に神倉神社に上がって明日の無事を祈願し、祭り翌日にお礼参りのため、また上がるという人も多いそうだ。今年の祭り当日の好天と無事終了を祈りたい。