【今では「特定外来生物」に指定、販売・栽培は規制され駆除の対象に】
キク科ハルシャギク属の多年草。原産地は米国の中部~南東部のミシガンやフロリダ、ニューメキシコなどで、日本には1880年代に観賞用として持ち込まれた。5~7月ごろ、明るく色鮮やかな花を一斉につけて一面を黄色に染める。花の直径は5~7cmほど。花びらの縁にギザギザの切り込みが入り、一見、秋に咲くキバナコスモスに少し似ている。
名前の由来は花びらの形を鶏の鶏冠(とさか)に見立て、キンケイギク(1年草)より一回り大きいことによるとも、金色に輝く花をキジ科のキンケイ(金鶏)にたとえたともいわれる。繁殖力旺盛で病虫害にも強い。このため戦後〝ワイルドフラワー〟として河川の土手などの緑化植物として注目を集め、全国各地で大量に種子が蒔かれた。緑化フェアなどの催しで種が配布されることもあった。同時に品種改良も進み、草丈が低い矮性種や八重咲き種など様々な園芸品種が作り出され、ポット苗としても販売されてきた。
写真は滋賀県近江八幡市の長命寺川の土手を埋め尽くすオオキンケイギク。規制前に県が法面(のりめん)補強などのため種子を蒔いたという。今では川と並行する湖周道路(さざなみ街道)沿いにも約3キロにわたって黄花が咲き誇る。世界自然遺産に指定されている屋久島でも県道沿いに咲き乱れているという。ちなみに鹿児島県では特攻隊があった鹿屋基地周辺に多く群生していたため「特攻花」とも呼ばれてきたそうだ。
緑化植物として推奨されてきたものの、8年前の2006年、外来生物法に基づき「特定外来生物」に追加指定されて、この植物を取り巻く環境は一変する。カワラナデシコなど在来の野草の生育場所を奪い、生態系を壊す恐れが強いというのがその理由。これを境に販売や栽培、移動が法律で規制され、違反した場合には罰則として懲役あるいは罰金刑が科せられることになった。日本生態学会もオオキンケイギクを「日本の侵略的外来種リスト100」に挙げている。
これに伴って、全国の自治体は「庭に植えないで」「駆除は種子がつく前に根こそぎ引き抜いて枯れ死させ、燃えるゴミとして処理を」などと呼び掛けに躍起。ところが、オオキンケイギクは他の特定外来生物(アレチウリ、ボタンウキクサなど)と違って、明るく爽やかな花をお花畑のように一斉に咲かせる。このため晩春~初夏の草花として地域住民に親しまれてきた側面もある。自治体主導で花の盛りに駆除していると「なぜきれいな花を抜くのか」といった苦情が寄せられることもあるそうだ。