【平野真理子著、健康ジャーナル社発行】
女子卓球界のホープ平野美宇の活躍がめざましい。今年1月の全日本選手権シングルス決勝で石川佳純を破って史上最年少(16歳9カ月)優勝を飾ると、4月のアジア選手権(中国・無錫)も優勝、さらに6月の世界選手権(ドイツ・デュッセルドルフ)では日本人選手として48年ぶりのメダル(銅)を獲得した。とりわけ完全アウェーの中でのアジア選手権では準々決勝でリオ五輪の金メダリスト丁寧(世界ランク1位)を接戦の末に破ると、準決勝・決勝でも中国のトップ選手を次々に撃破した。「まさか」。そのニュースに接したときの感動と驚きは2年前のラグビーワールドカップで日本が強豪南アフリカを破ったときに優るとも劣らぬものだった。
2000年4月14日生まれ。まだ17歳の高校生だ。3歳のとき卓球を始め、早くから「第二の愛ちゃん」と注目されていた。だが、昨年のリオ五輪では同学年のライバル伊藤美誠に先を越され日本代表落選の屈辱を味わった。その悔しさがその後の飛躍のバネの一つになっているのは間違いない。平野の夢は「オリンピックで金メダル」。強い精神力で目標に向かって進む平野はどんな家庭環境で育ったのだろうか。母で「平野卓球センター」(山梨県中央市)の監督を務める平野真理子さんは「親ばかと笑われるかも」と前置きしながら、平野には「努力する才能」が備わり「やると決めたらとことんのめり込む努力型」「ずば抜けた集中力が美宇の武器」と分析する。
5歳のとき平野は記者から「第二の愛ちゃん」っていわれているけど、うれしいと聞かれた。そのときの返答が「美宇は、みう」。「そう、どんな時も美宇は美宇らしくあればいい。これ、私のお気に入りの言葉です」(真理子さん)。ということで、この言葉が本書のタイトルになった。平野は3姉妹の長女。副題が示すように、本書には子育てのノウハウがいっぱい詰まっている。「自分のことは自分で」「子の自立は親次第」「褒める・叱るのバランスは三対一」「前向きに物事を捉えるプラス思考」……。橋本聖子さん(参議院議員、日本スケート連盟会長)の言葉に「人間力なくして競技力の向上なし」があるが、真理子さんも「あいさつや返事、態度や言葉遣い、そして思いやりと感謝の気持ちを決して忘れないように」と口すっぱく言い聞かせてきたそうだ。
平野のプレースタイルはこの1~2年、相手のミスを待つラリー志向の守備型から、攻撃的な速攻戦法に大きく変わってきた。平野は「今の壁を突き破って東京五輪に出場するためにはプレースタイルを変えるしかない」と自らの強い意志で決断したという。そのため強い足腰づくりへ体幹トレーニングを取り入れるとともに、メンタル面を鍛え直すため様々な分野や考え方の人と積極的にコミュニケーションするよう心掛けてきたそうだ。その努力が実を結び始めた。最新9月発表の世界ランキングは6位。日本人では5位の石川に次いで2番目(伊藤は7位)。ただ1~4位はなお中国の選手が独占しており、卓球王国中国の厚い壁が立ちはだかる。平野の当面の目標は年内の〝トップ3〟入りだ。