【根や葉は食用に、「ハマゴボウ」の別名も】
関東から九州までの温暖な太平洋側に分布するキク科アザミ属の多年草。アザミの仲間は北半球に約300種あり、日本にはそのうち3分の1の100種ほどがあるという。ノアザミをはじめその多くが日本だけに自生しているが、このハマアザミも日本固有種。強い潮風など厳しい環境に適応するため身を屈めるように横に広がる。そのため草丈は20~50cmほどで、ノアザミなどに比べるとかなり低い。
花期は7~11月と長く、直径3~4cmほどの紅紫色の頭状花序を上向きに付ける。厚い葉には光沢があり、縁に鋭い棘を持つ。学名は「キルシウム・マリティムム」で、植物学者の牧野富太郎博士が命名した。種小名マリティムムは海を意味するマリンに由来する。変種に花色が白いものがあり「シロバナハマアザミ」と呼ばれる。
ハマアザミの根は地中深く伸び、香りや歯ごたえがゴボウに似て食用になることから「ハマゴボウ(浜牛蒡)」の別名を持つ。根や葉はてんぷらやきんぴら、おひたしなどにして食される。牧野博士の出身地、高知県内では土佐料理に欠かせない食材の一つにもなっているそうだ。今年2月には室戸市内の飲食店8店が共同でハマアザミの若葉など旬の食材を使った季節限定メニューを〝春つげ御膳〟として提供した。「黒潮の怒々と崩るる浜薊」(石原義輝)。(写真は和歌山市加太で)