【怖そうな「ジゴクノカマノフタ」という別名も】
日当たりのいい草地や道端などでごく普通に見かけるシソ科キランソウ属の多年草。中国や朝鮮半島にも分布する。茎は四方に伸び、葉が地面にへばりつくように広がる。学名は「Ajyuga decumbens(アジュガ・デクムベンス)」。この種小名も「横臥(おうが)した」を意味する。花期は3~5月ごろで、濃い紫色のシソ科特有の唇形花を付ける。上唇は2裂し、下唇は3裂して大きく開く。
漢字表記の「金瘡小草」は中国名から。「金襴草」や「紫藍草」とも書く。キランソウは古くから虫刺され、切り傷、去痰、解熱、下痢止めなどに効く薬草として用いられてきた。生の茎葉をもんだり、乾燥したものを煎じて服用する。漢方の生薬名は「筋骨草(きんこつそう)」。弘法大師が薬草として広めたとして「弘法草」と呼ばれたり、医者がいらないほどの薬効があるとして「医者倒し」や「医者殺し」などと呼ばれたりすることも。
ただキランソウの別名としてよく知られているのは「ジゴクノカマノフタ(地獄の釜の蓋)」。その由来ははっきりせず、墓地でよく見られ地面に蓋をするように広がる様からとか、幅広い薬効から死にかけた病人を助け地獄の釜に蓋をしてくれるからとか言われている。しかし、もうひとつぴんと来ない。誰がなぜこんな変てこな名前を思いついたのだろうか。近縁種で茎が立ち上がる北欧原産のセイヨウジュウニヒトエ(西洋十二単、通称アジュガ)は「セイヨウキランソウ」とも呼ばれている。「きらん草古代紫展げけり」(後藤比奈夫)