く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<関西フィル> ラフマニノフ「ピアノ協奏曲2番」

2022年05月16日 | 音楽

【奈良出身の原田莉奈、渾身の名演奏】

 関西フィルハーモニー管弦楽団の演奏会が5月15日、奈良県文化会館(奈良市)で開かれた。この日は県内各地で音楽イベントが22日間にわたって展開される「ムジークフェストなら2022」の開幕日。関西フィルのコンサートは東大寺大仏殿でのオープニングコンサートに続いて行われた。会場の国際ホール(約1300席)は満席の盛況。演奏会は映画音楽2曲から始まった。行進曲風のバリー・グレイ作曲「サンダーバードのテーマ」と、弦楽器だけによる哀愁を帯びたミシェル・ルグラン作曲の「シェルブールの雨傘」(いずれも川上肇編曲)。

 観客が最も楽しみにしていたのは続くラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」だろう。この曲も映画ファンにはお馴染み。「逢びき」「旅愁」「七年目の浮気」などで使われ、さらにアニメ「のだめカンタービレ」でも。フィギュアースケートでもしばしば使用されてきた。2009年ヴァン・クライバーン国際コンクールのファイナルで辻井伸行が弾いた優勝曲でもある。しかも今回ピアノを演奏するのが地元奈良市出身の原田莉奈さん(25)。東京芸大の大学院3年生だ。第15回ローゼンストック国際ピアノコンクール2位(1位なし)など受賞歴も豊富。既にベルリン芸術大学ソロピアノ科修士課程に合格しており、9月からはドイツへの留学が決まっている。

 その演奏を間近で聴きたいとチケット発売初日に最前列の席を確保した。しかも鍵盤を操る手の動きがよく見える中央の少し左側の席。舞台の前面に置かれたピアノのスタインウェイまで5mもない至近距離だった。指揮の藤岡幸夫が演奏前「安定して揺るぎない技術。今後さらに進化していくだろう」と原田さんを評していた。その言葉通り難曲を難曲と思わせない高度な技巧で、強弱・緩急のメリハリが利いた名演奏だった。特に第2楽章の甘くせつない響きと第3楽章終盤の壮大で力強い演奏は圧巻。満場の客席から温かい拍手が鳴り止まなかった。

 原田さんが公演でこの2番を弾いたのは4年ぶりとのこと。「曲の解釈や体力的に変わってくるが、今後もその時々のベストを尽くして勉強を重ねていきたい」。その真摯な姿勢が自信にあふれた演奏にも表れていた。この国際ホールの舞台に上がったのは中学時代以来とも話していた。会場には家族や知人らも多く駆け付けていたに違いない。アンコールはリストの「ラ・カンパネラ」。来年1月8日にはドイツから一時帰国して京都でリサイタルを開くそうだ。休憩を挟んで後半の演奏曲はベートーベン「交響曲第7番」。こちらも藤岡の躍動的な指揮に加えコンサートマスター岩谷祐之(奈良県天理市出身)の統率力もあって、一糸の乱れもない素晴らしい演奏だった。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする