【穂状花序に黄色の唇形花】
ハマウツボ科セイヨウヒキヨモギ属の1年草。原産地はヨーロッパ南西部だが、世界各地に分布域を広げて帰化している。日本では約50年前の1973年に千葉県船橋市内で初めて確認された。帰化植物の中では比較的新しいが、その後、主に関東以西で急速に増殖中。日当たりいい場所を好み、各地の河川敷や土手、野原などでの報告例が相次いでいる。(写真は奈良市の平城宮跡で)
名前はヨーロッパから渡来し、草姿が同じハマウツボ科の日本在来種ヒキヨモギに似ていることから。「引蓬」の「蓬」は深く裂けた葉の形がヨモギに似ることから。ただ「引」については諸説。一説によると、茎を折ると中の維管束が糸を引くように出てくることからという。花期は5~7月。草丈は30~50cmほどで、穂状花序に長さ2cm前後の黄色い唇形花を付ける。下唇が大きく、先が3つに裂けて張り出す。葉や茎などに腺毛が密生し、触るとべとつくのも特徴。学名「Parentucellia viscosa(パレンツセリア・ヴィスコサ)」の種小名も「粘質の」「ねばねばした」を意味する。
ハマウツボ科の植物には寄生植物が多い。寄生根を他の植物の根に延ばして寄生し栄養分をもらう。例えばナンバンギセルはススキなどに寄生し養分の全てを宿主に依存する。このため“全寄生植物”と呼ばれている。これに対しセイヨウヒキヨモギは“半寄生植物”。葉緑体を持っており、他の宿主から栄養をもらう一方で自ら光合成も行う。寄生植物の中には「ハマウツボ=宿主ヨモギ類」というように特定の植物に寄生するものが少なくない。しかしセイヨウヒキヨモギはあまり宿主を選り好みしないといわれ、在来植物への影響が懸念されている。在来種のヒキヨモギは奈良、京都、石川、宮崎など各地で絶滅危惧種に指定されている。