【別名に「中国桜桃」「暖地桜桃」など】
今年の桜前線は東京からのスタートとなった。平年より10日も早く、3月14日にソメイヨシノ(染井吉野)の標準木で開花が確認された。そのソメイヨシノより一足早く満開を迎えるのがこの「カラミザクラ(唐実桜)」。原産地は中国で、日本には明治時代の初めに渡来した。「シナミザクラ」「中国桜桃」などの別名を持つ。園芸業界では「暖地桜桃」の名前でも流通している。
樹高は3~6m。3月に葉が出る前に直径2㎝ほどの白または淡い紅色を帯びた小輪の5弁花を平開する。雄しべが1輪に30~40本もあり長いのが特徴。5月になると直径1~1.5㎝ほどのサクランボ(桜坊)が赤く熟す。日本でサクランボといえば一般的に山形などで栽培されている「セイヨウミザクラ(西洋実桜)」を指す。果実は食用にもなるが、「佐藤錦」「高砂」「ナポレオン」などセイヨウ系に比べると、この東アジア系のカラミザクラは小さくてやや酸味もある。
このため食用というよりも花や実を観賞する庭木などとして植樹されることが多い。サクランボの多くは近くに授粉樹として異なる品種を植えないと着果しない。だが、このカラミザクラは自家受粉するため1本だけで実を結ぶ。十数年前庭に植えた写真のサクラも数年前から無数のサクランボを付けるようになった。その果実はヒヨドリなど野鳥の大好物だ。
学名は「Cerasus(Prunus) pseudo-cerasus(セラススまたはプルヌス・プセウド-セラスス)」。属名はラテン語の「桜の木」から。種小名のプセウドは「偽の」「似る」「―もどき」を意味する。カラミザクラからは多くの交配種が生まれている。ソメイヨシノとの交配により「ホソイザクラ(細井桜)」、カンヒザクラとの交配で「ツバキカンザクラ(椿寒桜)」、コヒガンとの交配で「トウカイザクラ(東海桜)」……。やや小ぶりの花を多数付ける品種が多いようだ。